中学受験のプロ直伝!本当に身につく勉強法<学年・教科別>
中学入試では、小学校の学習範囲を超えた難度の高い内容が頻出します。それらの正答率をあげ、合格を勝ち取るために必要なのが受験勉強ですが、単純に量をこなせば良いというものではありません。大切なのは、質の高い勉強を行うことであり、その実現のためのロードマップをしっかり描くことです。
本記事では効果的な受験勉強の方法について、具体的な時間数や進め方を例示しながら説明します。
受験勉強とは
小学校の勉強との違い
中学受験のための勉強と小学校での勉強は、「量」も「レベル」も「学びの環境」も、全く別のものです。
もちろん目的も違いますので、「どちらが勉強として正しい形か」という順位付けはできません。
ただ、比較することで、それぞれの特色を際立たせ、ポイントを整理することができます。以下、順番に見て行きましょう。
量
小学校の宿題は、手に負えないほどの量が出ることはほとんどなく、しっかり先生の話を聞いて、毎日家で少しずつ時間をとれば、基本的にはこなせるものです。
一方、中学受験生の多くは、受験に備えて週に数回塾に通い、塾から出される膨大な量の宿題に取り組んでいます。
具体的な数字はもちろん塾や学校によって違いますので、一概には言えませんが、例えば宿題の量で比較すると、同じ単元の同じ箇所を学んでいる場合でも、小学校が1Pとしたら、塾は4〜5P(あるいはそれ以上)出すこともあります。
また小学校の宿題の多くは30分程度で終わりますが、塾の宿題は1〜2時間かかったり、場合によっては終わらないこともざらです。
と言っても、宿題にかかる時間はお子さんの力によって違ってきます。同じプリント1枚を10分でこなす子どももいれば、1時間かかる子どももいますので、なかなか比較は難しいです。
しかし総じて言えることは、「ちょっと無理!」と思うくらい膨大な宿題を出す塾は、確実に存在するということです。なお、そうした場合でも先生に相談すれば調整はしてくれるようです。
そもそもなぜ中学受験のための勉強には、事実上通塾が必須となっているかというと、試験範囲が小学校の指導範囲を大きく超えており、全てを一通り学ぶだけでも、かなりの時間がかかるためです。加えて定着させるためには演習が必要であり、さらに応用問題へのチャレンジも行わなくてはいけないため、実際に必要な勉強時間は相当なものになります。
また、勉強とその先の進学に対し、明確な意欲がある高校生と違い、中学受験生である小学生はまだ幼く、精神的に成熟しきっていないからです。
もちろん問題の解き方など具体的なテクニックも教えてくれますが、中学受験の塾は監視的役割を担い、「子どもに勉強させてくれる環境の整備」という要素も強いのです。
つまり、小学校の勉強と違い、中学受験に必要な勉強量は子ども一人ではなかなかさばき切れない分量と言えるでしょう。
レベル
例えば同じ単元を学んだ際、もちろん重なる部分はあるでしょうが、塾では教科書に書いてあることだけではなく、そこから発展させて考えないと解けない、一段も二段も深みのある問題を出します。実際の入試では、応用問題が解けるか否かで差がつくためです。
また上述の通り、解かなければいけない問題や範囲が質的・量的にも多いため、限られた時間でこなしていくにはスピードも必要です。
つまり問題内容だけでなく、計算力だけを比べてみても小学校での勉強を超える高いレベルが求められます。
そもそも小学校の算数は、実生活で困らないようにするための算数です。おつりや値引きの計算が簡単にできなければ、困りますよね。一方、中学受験の算数は「思考力を問う」ことを目的にしています。このように目的が違うのですから、勉強する内容も当然違ってきます。
例えば、小学校でも塾でも「速さ」の単元は教えます。
まずは、以下の「速さの3公式」から説明していきます。
- 速さ=道のり÷時間
- 道のり=速さ×時間
- 時間=道のり÷速さ
小学校では、こうした公式を覚えて日常生活でも使えるようになるために、次のような問題を使って公式をあてはめる練習をします。
- 問題
時速48㎞で走る自動車で、5時間かかる道のりがあります。その道のりを時速60㎞で走る自動車では、何時間かかりますか。
- 解答例
道のりは 48×5=240(㎞)
60㎞で走ると 240÷60=4(時間)
答え 4時間
時間を求める前に、道のりを求めなければなりませんが、基本的には公式をあてはめることで答えが求められます。そしてこのくらいの問題が、小学校ではゴールになる場合が多いでしょう。
一方、塾の場合は、「速さの3公式」を学んだ後、いくつかの基本的な例題をこなしていきます。例えば次のような問題です。
- 例題1
道子さんは25㎞の道のりを往復するのに、行きは2時間、帰りは3時間かかりました。この時の平均の速さを求めなさい。
- 解答例
往復の道のりは 25×2=50(㎞)
往復の時間は 2+3=5(時間)
平均の速さは 50÷5=10(㎞)
答え 時速10㎞
この問題では、単に公式をあてはめて答えを求めるだけではなく、「往復の平均の速さ=往復の道のり÷往復の時間」という考え方を加えないと、正しい答えが出ません。行きと帰りの速さの平均をとってはいけないのです。
しかも、こうした典型的な例題はスタートであって、ここから練習問題、応用問題、さらには入試問題と難度は上がっていきます。
塾と学校で扱う問題では、このような違いがあります。
学びの環境
小学校ではさまざまな子どもがいますので、多くの先生は平等という観点から、中位層にあわせて授業を進めます。
しかしその配慮が、レベルが下の子にとっては、難しい内容で理解しづらく、レベルが上の子にとっては、わかりきった内容で退屈に感じてしまうという事態を、しばしば引き起こします。
対して塾では、能力別にクラス分けをすることで、その子のレベルに合わせた指導を行います。
この「成績別で線を引く」という点は、小学校で分け隔てない対応を受けている分、残酷に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、その子にあった学習環境を整えるというプラスの側面から実施しています。また上のクラスに上がりたいと、勉強に対する熱意を高める場合もあります。
小学校では一部で、意図的に競争を避けたり、勉強している子は「ガリ勉」で格好悪いという風潮がありますが、ライバルたちと切磋琢磨してこそ得られる喜びや苦しみは、かけがえのないものです。
塾では、勉強のできる子はむしろ、同級生たちに「すごい!神じゃん!」と褒められ、尊敬の対象になります。小学校で歯がゆい思いをしている努力家な子ほど、生き生きと勉強できるかもしれません。
環境の違いは、指導体制にも見ることができます。
担任の先生が多くの教科をトータルに教え、生活指導から行う小学校に対し、塾では科目ごとに、プロである専科の先生が指導に当たります。
問題児への対応
授業をわざと乱す、いわゆる問題児に対する対応は、塾ではどう考えているのでしょうか。そもそも、勉強をするために入ってきている子たちなので、学級崩壊状態までになることはあまりありませんが、授業中に騒ぐような子は塾でもいます。
態度の悪い子が同じ教室にいると、集中力がきれて勉強に身が入らなくなったり、便乗してふざけてしまうなど、悪影響が他の生徒にも及びます。
実は授業の乱れに、モチベーションが引きずられてしまうのは生徒だけではありません。先生も人間なので、いくら平等でいようという意識があっても、学ぶ意志があり、授業に応えてくれる生徒を指導する場合とそうでない場合では、発揮できる力が異なってきてしまいます。
こういった理由から、塾では問題のある生徒の受講を断る場合があります。
通常はそこまで行く前にきちんと指導し、場合によってはクラスを変えるなどして対応することがほとんどです。実際に、授業中に騒ぐような子は授業のレベルが合っていないために退屈、あるいは混乱していることも多く、対処することで大抵の場合は落ち着きます。
レッドカードはあくまで奥の手であって、問題児に対する塾の方針が「見捨てる」「切り捨てる」というわけではありません。顧客からお金をもらって成り立つビジネスだからこそ、生徒に提供する学びの質を担保するための自浄作用に重きを置いているのです。
受験勉強の進め方のポイント
小学校の勉強とは違うことだらけの中学受験勉強ですが、具体的にはどう進めていけば良いのでしょうか。キーワードとなるのは「繰り返し」です。
もちろん各教科で詳細は異なりますが(後述の教科ごとの勉強の進め方の項に詳しくあります)、分野・単元ごとに問題を解き、ミスしたところを重点的に見直し、再度同じ問題にチャレンジするという流れを繰り返して、しっかり定着させるという進め方は、4教科でほぼ共通です。
これらの狙いは、反復と出力によって長期記憶を確保することにあります。ただ暗記するのではなく、関連する記憶がセットで出てくると、忘れにくくなるためです。
例えば読者の方も、ご自身の経験と照らしてみると、簡単にこなせた分野・単元よりも、居残り補習や再テストをされるなど、苦戦した記憶がある分野・単元の方が、案外印象深かったりするのではないでしょうか。
塾のカリキュラムはこの点を前提に作られていることが多いため、特に問題はありませんが、自分でスケジュールや内容を決める自宅学習の場合は、定評のある参考書や問題集を、3回繰り返すのが基本であると考えましょう。
問題集の構成は、例えば算数の場合、単元説明→例題→練習問題→応用問題→入試問題となっているケースが多いです。
問題を解き終え、答え合わせもしたら、できなかった問題を中心に解答・解説を理解できるまで読み込み、しばらくしたら再びできなかった問題を解き直しましょう。
ここで注意しなくてはいけないのは、読み込みの目的は「答えを覚える」という点ではなく「解き方を理解し覚える」という点にあることです。
極端に言えば、解答自体は正誤の判断を行う程度に見るだけでもかまいません。
ミスをなくすポイントは、解説部分にあります。答えを見る意味を「同じ失敗を繰り返さないように、ヒントを探している」と、しっかり子どもがわかっていることが大切です。
安直に解き方を覚えただけだと、解き直しの際に、穴を機械的に埋めているだけに過ぎないのに、「自分は勉強している」と錯覚してしまい、慢心と油断に繋がる危険があります。
一方、そのような状態になることを危惧するあまりに反復学習自体が心配になり、同じような本があると、つい何冊も手を出してしまうという人もいます。ですが、複数の同じような参考書を勉強しても、重複する箇所が多い上に、それぞれ別の言葉で解説するため混乱を招き、あまり意味がありません。
中学受験を制するための一番の近道は、一見時間がかかるように見えますが、コツコツと積み上げていく繰り返し学習です。大変だからといって脇道に逸れず、足跡を確認しながら自分自身で道を作っていくことが大切です。
受験勉強の範囲
ここでは教科ごとに、頻出する問題分野と問題形式・傾向を示します。
どんな問題が出るかはもちろんその学校によりますので、ここにあげた分野が全て出るわけではなく、逆にここにない分野が出る場合もあります。志望校の過去問研究をよく行いましょう。
国語
- 問題分野
・読解問題:説明的文章・物語文・随筆・詩・短歌など
・漢字の書き取り・読み取り
・語句の意味(慣用句・ことわざなど)
・文法・技法・文学史
- 問題形式・傾向
・記述、選択肢、抜き出し、穴あき、脱落文など
・作文
・放送問題
2020年から実施される大学受験の新テストに沿う形で、問題の広がりと深さが増しています。
具体的には、自分で考える・想像する問題、具体例や経験をあげて説明させる問題が頻出するようになりました。また、テーマの深化、問題文の長文化、選択肢の長文化、複数選択化などの傾向も見えてきています。
特にテーマの深化と長文化については、従来の国語との差が顕著です。例えばテーマの深化のわかりやすい例ですと、恋愛を題材とした文章を出題する場合があります。
以前は子どもにも比較的わかりやすい、淡い初恋を描く作品が主流でしたが、最近では離婚などを含めた重いテーマも出題されるようになってきているのです。これは、児童文学作家が大人向けの文章を書くことが増えてきて、境が曖昧になっていることなどが影響しているのかもしれません。
問題文が長い学校では、18ページ(B5で換算)にも及ぶような量にもなる場合があります。また、選択問題の選択肢一つひとつが約180字もあるというケースもあり、時間内に正しい選択肢を選びきるには、読解力だけでなく速読力も必要と言えるでしょう。
文法や文学史などの知識問題は、女子校・共学校に多い傾向にあります。非常に広範囲に及ぶので勉強しづらく、苦手意識を持つ子が多くいますが、出るところはだいたい決まっているので、そこだけでも押さえるべきでしょう。後回しにしていると、手が回り切りません。
一方、採点しづらいためか、詩を出題する学校は全体的に少ない傾向にあります。
聞きなれない放送問題とは、読み上げられる放送文を、メモを取りながら聞いて、設問に答えるという英語のリスニングのような形式です。筑波大学の附属中で実施されています。
算数
- 問題分野
・計算
・和と差
・速さ
・割合と比
・場合の数
・数の性質
・規則性
・平面図形・立体図形
・水量
・理論・統計・他
- 問題形式・傾向
・計算
・文章題
・図形
・作図
難関校を中心に「数の性質・規則性」が頻出しています。これは他の単元に比べて、その場で考えなくてはいけない要素が多いため、本当の意味で理解しているか、実力を試すことができるからです。
また、算数には「書き出して調べる」という、地道な作業が必要な場合もあります。手を動かしながら考えることが大切なのです。
例えば、どうしても解けないと思うような図形問題が出た場合、ただただ見詰めているだけでは、ひらめきの可能性は低いでしょう。しかし、「とりあえず」文章で説明されている箇所を図に書き込んでいくと、ふっと頭に解き方が浮く場合があります。これは自分自身にその意図がなくとも、情報の整理ができるためです。
また、答えだけではなく、途中式や図を書くことを求める学校もあります。たとえ答えが間違っていたとしても、途中式があっていれば加点される場合もあるので、一つも手をつけないというのは非常に損です。
捨て問にすべきか否かも含めた難度の判断は、よっぽど時間がない場合以外は、問題文を読んだ段階ではなく、とりあえず手を動かしてみてから行うようにしましょう。
理科
- 問題分野
・生物(植物、動物、人体など)
・化学
・地学(地学、気象、天体など)
・物理(電気、力学、光・熱・音など)
・実験器具の使い方など
- 問題形式・傾向
・計算問題
・選択肢
・穴あき
・記述
・作図
・資料の読み取り(グラフや表、図など)
・時事問題(2018年:ヒアリ、金環日食、台風、惑星等)
非常に出題範囲が広いのが特徴です。どちらかというと、男子の方が得意かもしれません。
また時事問題はその年の事象をテーマに設定しますので、よくニュースをチェックしておきましょう。
記述問題では、「なぜこうなるのか」などが問われるので、解答を端的に書ける力が必要です。
また、理科の用語はよく似たものが多く、勉強自体はした覚えがあるのに、肝心のワードが思い出せないという子が意外に多く、穴あき問題に苦戦する場合もありますので、注意しましょう。
社会
- 問題分野
・日本の地理
・日本の歴史
・政治・経済(公民)
・国際など
- 問題形式・傾向
・選択肢
・穴うめ
・記述
・資料の読み取り(統計資料、文章、地形図、写真、絵画、天気図など)
・時事問題(2018年:自然災害<東日本大震災、熊本地震など>、移民難民問題、オリンピック、情報化社会<AI、フェイクニュースなど>)
近年の論理的思考を重視する傾向は、もちろん社会の試験にも影響しており、記述問題も増えてきています。国語とは違い、ほとんどが一文で答える形ですが、事象の原因や理由を問われる問題が多く、情報整理力が求められますので、油断は禁物です。
世界地理や世界史は出ませんが、国際という分野で多少関連する問題が出てくると思われます。時事問題の勉強も含め、一般常識程度には知識を蓄えておくと良いでしょう。
また、社会に限ったことではありませんが、小学校の勉強が不十分であったために、穴を作ってしまったというケースが、意外に多いため注意しましょう。
中学の先生がテストを作成する時、実は小学校の教科書を参考にしていることが多いようです。小学校の教科書はどの教科も、基本的には文章の説明だけでなく、図を掲載することで、ポイントをわかりやすく示しています。
特に、社会の教科書には写真や絵が多く載っていますが、それらを題材にした問題が出される場合が少なくありません。
つまり、小学校の教科書をすみずみまでしっかり読んでいないと、抜け落ちてしまうということが十分起こり得るのです。こうした事態を防ぐためにも、小学校の勉強を侮ってはいけません。
勉強時間
勉強に費やす時間は、受験生本人の性格や志望校のレベル、学年によって、大きく異なります。
ただ、「1週間、毎日同じ時間勉強する」というのは、現実的に考えて難しいため、実際には
- 塾でバリバリ勉強する「通塾の日」
- 家庭学習のメインとなる「塾に行かない日」
- 長時間の家庭学習と休息を兼ねた「土日」
の3パーツを組み合わせて、構成されていることが多いと思われます。
このうち、通塾の日はそれだけで手いっぱいで、家庭学習を行うには時間的にも体力的にも難しいでしょう。できたとしても、せいぜいテキストのその日学習したページを読み返す程度と思われます。
土日については、おそらく多くの家庭で、学校がない分、勉強時間も休憩時間(余暇時間)も、平日より多くとるだろうと予想できます。
ただし、6年生の後半では、完全なオフの日というのは設定しづらくなり、さらに「通塾の日」が1つ増えるというのが、実情でしょう。
上記の条件を踏まえ仮に作成したのが、以下の2例です。
私立中学を受験する子と公立中高一貫校を受験する子の、それぞれの6年生の1週間を想定しています。
いずれも受験生全体から見た正確な中央値とは言えませんが、これに近しいスケジュールで動いているという人も多いかと思います。
私立中学を目指し、塾に週4日(月火木土)通っている子の場合
公立中高一貫校を目指し、塾に週2日(火木)通っている子の場合
このうち予定として確定しているのは、いずれも塾での勉強時間のみです。
「予備時間」というのは、学校に加え、お風呂や食事、通塾時間、最低限の休息時間など、生活に必要な時間を除いた上で、スケジュール的に空白となる時間です。
この予備時間と、塾や家での勉強時間を足した数値が「子どもが使える時間」ですが、実際にこの時間いっぱい勉強をするのか、それとも休憩時間を多めにとってあげるのかという判断は、それぞれの家庭次第でしょう。
ただグラフを見てもらえれば、予備時間を除いたとしても、1日のうちのかなりの部分が勉強に費やされているということが、わかると思います。
この例に加え、難関私国立校を受験する場合は、勉強時間にあてる予備時間の時間数が多くなるでしょう。もちろん、どの学校を受けるにしても、受験(受検)まで100日ともなれば、「いくら時間があっても足りない!」ということになり、1日中勉強していることになるとは思います。
勉強時間も大切ですが、勉強の質も大切です。ダラダラしながら問題を眺めていただけの子よりも、短い時間でも集中し、難問を解いた子の方が確実に実力は身につきます。
またこの「質の重要性」は、自己の裁量が強い家庭学習だけに当てはまるものと思われがちですが、塾での授業の受け方にも関係します。
せっかく遅くまで勉強していたとしても、ぼんやりしていて、講師の解説が耳からすり抜けていってしまうようでは、意味がありません。
勉強時間の目標や週間スケジュールを立てるときには、その時のやる気だけで無茶な数字を立てるのではなく、質の維持・向上ということも考えましょう。
塾での学習
ここまでは全体を俯瞰してきましたが、ここからは各教科にフォーカスし、効果的な勉強法など、具体的なテクニックについて、説明します。
本項では塾での学習をどう進めるかがテーマです(家庭学習については次項をどうぞ)。
全教科に共通して言えるのは、自分の志望校に合った志望校別対策講座はとるべきだという点です。定評のある講座(講師)なら、その学校の出題傾向を徹底的に研究しているはずなので、非常に効果的な学習が期待できます。学校のクセや解法のポイントを抑えておくことは、大変重要です。
国語
4・5年生
塾での国語のカリキュラムは、多くの場合スパイラルになっており、他教科以上に同じことを何度も学ぶでしょう。
授業自体は、基本的に「問題演習を行って、答え合わせ」という流れで進みます。
難度の分かれ目は5年生の中盤ごろ。4年生までは感覚で正解になる易しい問題が多かったところが、センスだけでは通用しなくなってきます。
論理的な読み・書きを意識して、演習に取り組みましょう。
漢字などの言葉については、今のうちにコツコツと勉強していないと6年生になって大変苦労します。
塾での漢字の書き取りはしっかりやって、身につけましょう。
国語では、「あまり勉強しなくても成績の良い子」と「いくら問題演習に時間をかけても良い成績が取れない子」が、しばしばでてきます。
これは、国語には、算数の公式のような明確な指標がなく、塾の先生も解法を系統的に説明しづらい傾向があるためです。
授業中に先生の話を聞いているかという点が、ポイントとなるのはもちろんですが、さらに先生の話す「断片的な解法」を、自分なりに集大成できるかどうかが鍵になります。
つまり国語の勉強に必要なことは、習ったことをベースに自分なりの「読み方」「解き方」を確立することです。
成績がイマイチ伸びないという子は、一度、自分が「読み方」「解き方」といった“やり方”をどのくらい持っているか確認し、自分なりに整理してみるのが良いでしょう。
6年生
4、5年生と同じように、「問題演習を行って、答え合わせ」という授業が多いですが、問題は格段に難しくなってきます。
まず、問題文の内容ですが、物語文では徐々に複雑で心情表現がとりにくい内容になってきます。また、説明的文章では、話題(テーマ)が自然環境や動植物といった読み易いものから、「言語・コミュニケーション」「文化・習慣」「文芸論」といったものや哲学的で難解なものになります。これだけでも大変なのに、設問も記述問題の制限字数が増えたり、選択肢問題が紛らわしくなったりします。
こうした問題の変化により、急激に成績が落ちる子どもが出てくるのもこの時期です。「論理的に考える」「読み方・解き方の方法論を身に付ける」「語彙力の強化」を心がけましょう。
自分で勉強できないと思う人は、プラスアルファのテスト講座や演習講座をとっておくと良いでしょう。ただし、とるだけ、こなすだけではダメです。
6年生も後半になってきて、自覚が生まれ、かつ自分が受けたい学校を対象とする講座が無い場合は、自分で過去問をやっていた方が良い場合もあります。
国語の問題は、過去問や模試と同じものが出ることはまずありませんが、問題文だけに限ると、同じ文章が出てくる場合があります。
例えば、論説文では数年前に話題になった新書からの出題が多いようですが、熱心に研究している大手の模試がこれを的中させるといったようなケースです。
言うまでもなく、これはアドバンテージになります。文章の内容を一回読んでいる訳ですから、高い得点が期待できるでしょう。
このようなラッキーを過剰に期待しすぎるのは良くありませんが、「もしかしたら棚ぼたがあるかもしれない」程度に受け止める分には問題ありません。
模試に行きたくない、行っても意味がないかもしれないと思うときに、思い出していただけたら幸いです。
算数
4・5年生
計算のスピードを速くしたり、工夫した計算を心がけるなどして、今のうちに基礎の基礎である計算力を鍛えておく必要があります。また、条件の書き出しや線分図を描いてみるなど、面倒くさがらずに手を使うことも覚えておきましょう。
「この問題はこう解く」というパターン式の解法だけでは、偏差値の伸びが止まってしまいます。
やり方を覚えるだけではなく、「なぜそうなるのか」という理由を、考えながら解くことが大切です。
算数の山場は、5年生の半ばごろから扱われることが多い「比」だと言われています。
比は「図形と比」「速さと比」など、他の単元で問題を解くのに使用する大切なツールです。苦手としてしまうと最後の最後まで苦労してしまいます。
「比」でつまずいてしまい算数自体が苦手になる子どもは、大変多くいます。特に要注意の単元と言えるでしょう。
算数ができない生徒は、算数を解く手順がわからない場合が多いです。そんな時は得意な単元を1つ作ると、算数の勉強の仕方がわかって他の単元も上がるという良い循環に入れるようになります。
問題を見てから解くまでのプロセスは、「情報整理→糸口の発見→公式→計算→検算」となっています。例えば得意な単元なら、問題文を読んだ時に特に意識することもなく情報を整理し、それによりすんなり糸口を発見し、公式に当てはめて計算できるでしょう。
一方、苦手な単元で全く解法の想像がつかないという場合でも、この流れを知っていたら、まずは情報を整理するところから始め、糸口に当たる箇所を見つける…という手順が踏めます。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉がありますが、同時に全ては狙わず、集中して1つの科目・1つの単元に時間と労力を集めて「得意」にすると、手法を覚えられるだけでなく、自信も湧いてきます。一点集中型の勉強で、最終的に二兎を得ましょう。
6年生
算数は理科・社会に比べて早い時期にカリキュラムが一通り終わります。これは応用問題に時間を多く取るためですが、6年生になった段階で終了している塾もあれば、6年生の夏休みまでに終了する塾もあり、塾によって速度はまちまちです。
しかしそれなら、6年生は応用問題をどんどん解いていけば良いかというと、それだけでは済みません。
まず、まだカリキュラムが終了していない場合は<1>新しい単元を学ぶ必要があります。
次に、<2>苦手な単元がある場合はそれを克服するための復習にも時間を割かなければなりません。
他の単元も放置しておくと解き方を忘れてしまうので<3>忘れないためのおさらいも必要です。
さらに、今までは単元ごとに出てきたから解けていたのが、単元がバラバラ(ランダム)に出題されるとたちまち解けなくなってしまうという場合があります。そうした生徒は<4>ランダム問題に慣れる演習も必要になってきます。
こうした4重苦に悩まされるのが6年生の1学期から夏にかけてです。特に<1><2>を確実に行うことが最優先ですが、合間に<3><4>で補強していくことが必須なので、大変忙しくなります。
算数は4教科の中で、最も時間が取られる科目でしょう。
苦手単元がなかなか克服できない場合は、短期的な個別指導も考える必要があるかもしれません。
ただ、「速さより、比の方が重要ですよ」など、個別指導の先生が子どもの苦手単元とは違う、他の単元を推してくる可能性があるので、注意が必要です。
監督である親が子どもの得手不得手をしっかり把握し、本当に必要な勉強を見極めた上で、主導権を握っておくことが大切です。
また、集団授業であっても、自分の苦手に合致している場合は効果的です。しかし得意分野であったら、いくら講座名に「頻出」などと書いてあっても、無理してまで受ける必要はありません。
理科
4・5年生
理科は知識を増やすことを中心に考えがちですが、最近は理科的思考力が問われる問題も増えてきています。
学校の授業を含めて知識を習得し、さらに塾の難しい問題演習を通じて「なぜ」という視点を大切にすると良いでしょう。
算数に時間をとられて、なかなか理科・社会まで手が回らないというのが現実ですが、4年生の間は、塾や学校の授業を集中して聞き、家で復習して確実に身につけるというやり方がベストです。
5年生になると学習すべき知識も増え、内容も専門的になってきます。受験に必要な多くの知識や解法を勉強していきますので、単に覚えるだけではなく、「なぜ」そうなるのかを理解して覚えるという姿勢を大切にしましょう。
理科的な思考力を増すためには、時間の取れるこの時期に、塾などが主催する実験教室へ参加するのも良いかもしれません。
6年生
今まで培ってきた知識を、点ではなく面にまで広げ、体系的に理解していくフェーズです。
問題演習は、忘れていたことを思いださせてくれるだけではなく、今までぼんやりしていた知識が「カチッ」とはまり、理解をより深める効果があります。つまり、知識の定着と活用練習が同時に行えると考えて良いでしょう。
時間的になかなか厳しいでしょうが、できるだけ多くの演習時間をとり、自分の中からどう知識を引き出すのかを覚えましょう。
間違えた問題は解答解説を読んで理解し、数日後解きなおすことで、苦手を克服しましょう。また、わからなかったところはそのままにせず、授業の終わりなどタイミングを見つけて、先生に聞いておくことが大切です。
社会
4・5年生
理科同様に、算数に時間を取られることで手が回りにくいかもしれません。塾や学校の授業をしっかり受け、復習することだけは確実に行いましょう。
多くの塾では、4年生(3年の2月~4年の1月)で地理を一通り勉強しますが、5年生の前半(4年の2月~5年の7月)でも続けて地理を勉強していきます。内容的にはスパイラル化しているため、4年生であまり勉強する時間がとれなくても、5年生で取り戻せるでしょう。
ただし、5年生の後半(5年の9月~6年の1月)で歴史を学びますが、ここでは穴ができないようにしっかり勉強していく必要があります。
さて、社会というと暗記科目と思われがちですが、それでは自ずから限界があります。
例えば地理については、地名を学ぶ時には地図帳で位置を確認したり、地名と関係の深い産業に結び付けたりするなど、関係付けが大切です。用語は名前だけでなく、意味もしっかり理解してから覚えましょう。
また、算数と同じように、手を動かすことも大切です。4年生ならまだ時間がありますので、白地図に手で情報を書き込むなどし、視覚的に覚えて理解すると、応用力もついてくるのでおすすめです。
6年生
多くの塾では6年の前半(5年の2月~6年の7月)で公民を学びます。歴史と同じく穴ができないようにしっかり学びましょう。
そして6年の後半からは、いよいよ理科と同じく今まで培ってきた知識を問題演習で定着させる時期です。特に地理の問題が歴史上の事件と結びついてくるなど、関連の知識がつながることで、応用力も出てきます。
逆にいうと、分からなかったところをそのままにしておくと、複合問題などに当たったときに、「地理の知識はあるのに、歴史がわからなかったから答えられなかった」など、損する可能性がありますので、積極的に先生に質問しましょう。
また、2学期は時事問題の学習も必須です。小学生がすべてを網羅するのは無理があるので、専門の講座があればとっておくべきでしょう。
なお、実際の入試の大部分は基礎学力を問うものです。一部の難問については、そこで時間を取られて他の単元や教科が回せないくらいだったら、無視するのが一番です。
家庭学習
大きな枠組みが決められている塾での学習と比べ、自分で舵を取っていかなくてはならない分、家庭学習は進行難易度が高く、「本当にこれで良いのか」と悩んでいらっしゃる方も多いかと思います。
受験勉強全体で見ると、家庭学習の時間は塾にいる時間よりも多いため、効率的な勉強のやり方を押さえて、実りのあるものにすることが大事です。
国語
4・5年生
漢字の書き取りや言葉の問題演習は、基礎力を養うものです。模試の復習と合わせ、徹底するようにしましょう。
また、早い段階に読書の習慣が付いていることも大切です。読書の習慣は、語彙量や読解スピードに、大きなアドバンテージを与えてくれます。
5年生ごろから徐々に忙しくなり、6年生になると、とても本を読む時間は取れません。4年生までが、読書に十分な時間をかけらえる学年と考えましょう。
親が、入試に役立ちそうだなと思う、オススメの本を教えてあげるのも良いです。ただ問題文も多様化してきているので、頻出作家(ひと頃の重松清さんなど)を読むのはあまり意味が無くなってきています。
子どもが好きな3大ジャンル、「SF」「ファンタジー」「ミステリー」はあまり入試問題には出ませんが、本人が楽しく読んでいるようでしたら、読書力を鍛えるという面を期待して、口出ししないようにしてあげましょう。
4年生と5年生の大きな違いは、論理的な思考力の発達です。学年が切り替わり、5年生の半ばごろにもなると、問題が急激に難化します。
解法についても、アプローチを大きく変えないと、点数が伸びません。塾での学習の項でも説明しましたが、その場その場で考えるのではなく、一度時間をとって模擬試験などにおける過去の自分の解答を見返すなどし、「自分なりの国語の解き方」というものを確立しましょう。
6年生
6年生で国語ができない原因はいくつかありますが、特に目立つのが語彙不足です。問題文が読めなければ、スタート地点にも立てません。
その場合は漢字だけではなく、「言葉」に関する知識を増すために、「言葉の単語集」を使って、別途勉強すべきです。
もしこの状態に早く気がついたのなら4、5年生のうちに同じ手法で鍛えましょう。早いに越したことはありません。
1日15分程度の勉強で、おそらく3か月もすれば目に見える効果が出てくるはずです。夏休み前ならなんとか間に合うのではないでしょうか。
国語の解き方を確立し、過去問や演習問題の中でそれをさらに磨けると、伸びる子は6年生の後半でも、グッと伸びます。
一方、塾の授業で成績が伸びない場合は、家庭学習の時間に、国語で定評のある個別指導を受けるのも良いでしょう。特に個別指導での過去問演習を使った志望校対策は、まさに自分のためにカスタマイズされた学びとなりますので、非常に効果的です。
スケジュール的に制約がある6年生でも、スカイプ等による指導なら、通う時間などが取られないため、十分受講できます。
模試の復習も、4、5年生に引き続き、必ず行いましょう。国語は設問だけでなく問題文も読み直さなくてはいけないため、ついつい面倒臭くなってしまいがちです。しかし、復習こそが国語力をあげるための効果的な学習法と言えます。
過去問については単純に解くだけでなく、分析が必須です。問題文ではテーマ、設問では設問の種類や問い方に学校ごとにクセがあるので、演習を通してその傾向に慣れましょう。
なお、説明的文章が苦手という人には、問題を解くのではなく、問題文だけを読んで読み慣れるという「過去問の読書」を勧めます。
中学受験では、大学入試の問題かと思われるほど難しい文章が出題されることが少なくありません。しかし、幸運なことに、出題される文章のテーマが「自然環境」「文化・習慣」など、かなり決まっています。
過去問読書によって、同じテーマの文章をいくつも読んでいくと、そのテーマに関する知識が蓄えられ、読み易くなってきます。そうしているうちに、論説文自体も読み慣れてきて、やがては難しい哲学的な内容も何とか最後まで読み通せるようになると思います。
算数
4・5年生
4年生、あるいは5年生の半ばくらいまでの内容なら、お父さんやお母さんでも家庭で指導可能です。ただその場合、「中学受験の算数」の教え方をすることを心がけてください。
例えば、「問題を解くならこっちの方が楽」と、中学受験では使わない方程式で解いてしまうと、塾で教えてもらった解き方と異なるため、どちらを選べばいいのか混乱を招きます(塾で方程式を使って解いている場合は問題ありません)。
算数のテストの点数は、問題演習量に比例すると言われています。例題を解いたら、練習問題、応用問題の順で解き、分からなければ解法を見ながら、理解しながら解きます。
1回解けた問題もしばらくしてから(1週間後程度)再度解きましょう。その時解ければ、ある程度はマスターしたことになります。ただし、そこからずっと放っておくと、忘れる場合があるので注意しましょう。
また、4、5年生だけに限った手法ではありませんが、模試の結果を使って苦手単元を見極める方法があります。
まず、模試の結果から、全体正答率が50%以上、かつ、自分の子どもが間違えている問題をピックアップします。1回の模試ではなかなかわかりませんが、何回も模試を受けていると傾向がわかってくるので、それらを並べて見ましょう。繰り返し間違えている箇所が浮かび上がってくるはずです。
全体正答率50%以上の問題が、全て合っていたら偏差値は確実に50に達します。つまり、易しい問題なのに解けていない箇所が、弱点単元であるということなので、それらをひとつひとつ潰していくのが、成績向上の近道です。
また、難易度的にできた可能性がある問題を、捨て問扱いして抜かしている場合などもわかります。
捨てるべきではない問題を見分ける感覚を、掴むヒントとしても、役立てられるでしょう。
6年生
6年生で算数が苦手というのは、かなり厳しいので、早急に手を打たなくてはなりません。
苦手の原因は、過去の単元の積み残しであることが少なくありません。そんな時は、過去に勉強した塾の教材やノートを出してきて、苦手な単元をつまずいているレベルから学び直す必要が出てきます。
例えば図形の場合、塾のカリキュラムは「図形の性質」→「平面図形」→「立体図形」の順番で推移していきます。
つまり、図形の性質や平面図形でわからないところ、つまずいているところがあると、立体図形をいくらやっても苦手は克服できないのです。
ただ、どこまで戻るかというのは、始める前によく確認しましょう。不安になるあまり、単元の最初からやると、わかっているはずのところにまで時間を割く羽目になって、他の単元や教科の勉強に支障をきたす可能性があります。
時間短縮のためには、「偶数問題」「奇数問題」というやり方もあります。
過去のテキストで、<1>〜<10>の問題があった場合、とりあえず<2><4><6><8><10>だけを解く…といった具合です。
全ての問題を振り返りたいところですが、時間的に難しい場合は、問題量を半分にしてその分時間を浮かしてしまうという苦肉の策です。
算数がどうしても苦手という生徒には、「パターン学習」という方法も選択肢の一つとしてあります。これは自宅学習用の勉強法で、特に偏差値50未満の子どもに有効です。
具体的には、まず例題を全てコピーして、ノートに貼るか、ファイリングします。中学受験の場合は、おそらく250〜300パターンほどになるでしょう。
それをとにかく時間を見つけて、ひたすらめくりながら解き続けます。解けたものは除いて、また残ったものを見ていく…ということを繰り返し、できない問題を減らしていくという方法です。
例題としては改定前の「予習シリーズ」が良かったのですが、残念ながら改定後はかなり難しくなってしまったので、他の問題集の例題を使いましょう。
とにかく考え方のパターンを身につけることを意識した勉強法なので、例題レベルの解き方ならわかっているという子には向きません。
理科
4・5年生
自宅では理科社会の復習までなかなか手が回らないでしょうが、放置しておくと、苦手分野を作ってしまうことになります。少しずつでも、復習の時間を作っていきましょう。
わずかな時間の学習も積み重ねると、大きな成果につながります。
学校での理科の実験は、貴重な体験の場になります。大手の塾では「実験教室」を開催するところがありますが、中小塾となるとなかなかその場が持てません。
学校なら追加の費用はいりませんし、積極的に中心となって実験をやりましょう。本番の試験で役立つはずです。
物事の原理原則を知るには、体験することが一番早いです。特に動植物や、天気、電気など理科の単元は、暮らしに密接しているため、日常の中で具体例に触れる機会を、積極的に作ることができます。
もちろん基本的な知識は絶対必要ですが、それは塾の担当分野です。家庭では、生活を通して、「なぜ」の視点を養っていくことが、この時期は一番大切です。
6年生
再三にはなりますが、最近の試験では理科的な思考が問われる傾向が強くなっています。すなわち、記述問題や、表やグラフなどのデータを使った思考問題が増加しているのです。
5年生までは「なぜ」の視点を大切にすべきと書きましたが、6年生になったらその視点で得た情報を、ペーパーに落とし込む技術も求められます。
これはその場のひらめきではどうにもならず、あらかじめ培っておくしかないものなので、注意しましょう。
6年の9月からは志望校対策講座を開講する塾も多いと思いますが、自分の志望に合っている場合は積極的に取得するべきでしょう。
問題は、自分の志望する講座が塾に無い場合です。そんな時は無理やり他の学校のコースをとるよりも、自宅で過去問演習を行う方が効果的な場合が多いです。
わからない問題の解決に困るという生徒には、個別指導や家庭教師という手もありますが、理科社会は、難関校を受けるか、よっぽど苦手な場合以外では、塾の先生への質問や参考書などを活用すれば、ほとんど解決できると思います。
ただ短期間でまとめてほしいという人には、もちろん集中的な指導が有効です。
社会
4・5年生
塾で知識を吸収し、それを自宅で復習するという流れです。
社会では、小学校の教科書に記載されている事柄を題材にした問題がよく出題されます。教科書を軽視することなく、しっかり勉強していきましょう。
社会が好きになる子は、歴史の分野が発端である場合が多いようです。
NHKの大河ドラマやいわゆる「マンガ日本史」などを勧め、関心を持たせてあげるのも良いでしょう。
ドラマや漫画などビジュアルで知ると、大きな流れが物語としてすんなり頭に入ってくるため、大変便利です。
また旅行した時に、地図で調べる、その地域の風土や歴史を調べるなどすると、本人も「単なる勉強」よりやる気が湧きますし、学びが記憶と結びついて、身につきます。
理科でも社会でも、実体験というのは先々において応用力を培うものですので、博物館などに一緒に行くのも望ましいと思います。
6年生
他教科で忙しく、なかなか時間が取れないとは思いますが、時事問題などに備え、10分でも20分でも良いので、新聞を毎日読みましょう。難しければ、「子ども新聞」という手もあります。これなら4、5年生も読めるでしょう。
社会は特に複数の単元、あるいは教科にまたがる横断的な問題も出題されるので、メイン記事の隣に関連記事が掲載されていたり、記事の分量比較(重要度の比較)がしやすい新聞が、ネットやテレビのニュースより向いています。
6年生の9月からの志望校対策講座は自分の志望に合っていればとり、そうでない場合は自宅で過去問演習を行うべきという点は、他教科同様です。
個別指導や家庭教師は頼むとしても、みっちり鍛えてもらうというよりは、時間的な問題もあり、スポット的な指導になるでしょう。
まとめ
受験勉強の進め方のコツは、掴めたでしょうか。限られた時間で、膨大な出題範囲をカバーし、受験に挑むには、バランスのとれた勉強が必要です。塾と家庭学習、どちらかに偏るのではなく、表裏一体のものであると捉え、お互いをリンクさせ合い、より効果を高めるような勉強ができると良いですね。
この記事の監修者
小泉浩明 (こいずみ・ひろあき)
1956年東京生まれ。平山入試研究所所長・森上教育研究所研究員。桐朋高校・慶応大学卒業後、米国にてMBA取得。現在は「小泉国語塾」の運営、執筆、教務研究を行う。著作に「必ず出てくる国語のテーマ」(ダイヤモンド社)他。
詳しいプロフィールはこちら