叱るときは演技して!親がすべき4つのサポート

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一般に、中学受験は親子で挑む受験と言われています。子どもはもちろん受験勉強を頑張りますが、親もそのサポートを頑張り、二人三脚で合格に向かっていかなくてはならないからです。この記事では受験勉強を進めて行く上で、親が意識すべきポイントを解説します。

|2021 麻布過去問対策/問題文の読み方夏期講習 開催! 受講生を募集開始 開催日:8/15(日)、8/29(日)|3ヶ月で伸ばす!中学受験 国語の記述アプリ|小泉浩明先生監修「KAKERU PLUS」

中学受験は親子の受験

中学受験は他の受験に比べて、際立った特徴があります。それは「親子の受験」であるということです。
小学受験の場合、主体は完全に親であり「親の受験」です。親が学校を決め、必要であれば塾で勉強させ、そして試験を受けさせます。受験生である子どもたちは親に言われるがまま、ただ指示に従うだけです。
一方、高校・大学受験の主体は受験生ですから「子の受験」です。親の意向が反映される場合もあるでしょうが、多くの場合、自分で学校を決め、塾や予備校で勉強し、そして合否は自分の将来を決める一大事として真剣に受け止めます。
それでは中学受験はどうかと言えば、受験生である子どもが勉強しますが、多くのことを親がサポートしてあげなければなりません。学校選びや塾選び、プリントや宿題のチェック、肉体面・精神面の健康管理、さらには弁当作りや塾の送り迎えなど、手助けしなければならないことがたくさんあります。

なぜ、こうした親のフォローが必要かと言えば、

  1. 勉強法、計画の立て方、失敗の受け止め方、努力の苦しさや喜びなどの経験が不足している
  2. 物事を決める際に必要な価値観や情報の取捨選択能力が不足している
  3. 現状や将来を「自分事」として考える当事者意識が希薄である

といった理由があげられます。
もっとも、これらは年齢を重ねるうちに起こるさまざまな体験を通して培っていくものなので、幼い小学生に欠如しているのは仕方のないことです。
しかし、テストの点数が悪くても受け止め方が希薄であったり、どうしても勉強が辛く宿題を投げ出してしまったりなどすれば、受験勉強には大きな障害となります。
しかも、5年生の中頃から自我、論理性が飛躍的についてくるので、子どもに対するフォローの内容を変えていく必要もあります。

中学受験がしばしば「親子の受験」と言われるのは、子どもがこういった発展途上の段階にあるからこそ、親のサポートの効果が結果に響いてくるからです。
では具体的にはどう関わっていけば良いのでしょうか?次項から順番に説明していきます。

まずは、親と塾の役割の線引きから考えてみましょう。

受験生を支える親の役割

「親の役割」を考える際に、親は「現状、どこまでの役割を塾に担当してもらっているのか」あるいは「今後どこまでを任せられるか」を意識することが必要です。
塾が志望校合格のためにしてくれることには、以下のようなものがあります。

  • 講師、教材、カリキュラム、ノウハウの提供
  • 宿題、模試の提供
  • 「塾内での」学習、体調、メンタル管理

いずれもプロではないとできないことで、大変重要な支えです。特に塾内で面倒を見ることは親にはできないので、塾との意識や情報の共有は必須です。
しかし裏を返せば、塾も家庭内での面倒は見られません。つまり「塾に入れたから、あとは全部プロにお任せ」ということは不可能です。

具体的に家庭(親)には、志望校合格のために

  • 家庭内の学習管理
  • 目標管理
  • 体調管理
  • メンタル管理

など、管理者としての役割が求められます。

管理者というと、どこか企業的なイメージがありますが、むしろスポーツの世界における「監督」「コーチ」「トレーナー」「マネージャー」のイメージがピッタリです。
このうち親の役割は「監督」や「マネージャー」で、実際に教科を教える塾の先生が「コーチ」や「トレーナー」にあたります。
もちろん、親が家庭で子どもに国語や算数などを教えることもあるでしょうが、後で述べるように、学年が上がってくると難しくなると思います。
それでは、それぞれの役割やその分担について説明していきましょう。

誰がどの役をやるか

知識の重要性

「本当に身につく勉強法」「塾選びのポイント」などでも触れてきましたが、中学受験に挑んでいくためには、役割分担をどう行っていくかがポイントとなります。そして、その役割を上手に果たすには、中学受験に対する知識を持つ必要があります。
知識が不足しているとなんとなく雰囲気に流されて、「気がついたら本来の志望校ではなく、塾のおすすめ校を受けることになっていた」など、不本意なことになってしまいますので、人任せにするのはやめましょう。
ありがちなのが、親御さんが中学受験経験者で、現状を調べず自分の時代の認識で進めようとするパターンです。年月を経て偏差値や校風、あるいは出題傾向が大きく変わっている場合もあります。
大事なのは「今」ですので、情報収集を怠ると、予想もしていなかったとんでもない失敗を起こす可能性もあります。

具体的な役割を考える際は、監督(=全体の指示・管理)やマネージャー(=管理・世話)としての役割を、誰にどの程度配分するかに加えて、コーチやトレーナー(=教科内容やスキルの指導)との違いを意識しましょう。

監督・マネージャー

まず、監督やマネージャーとしての役割について解説します。子どもが低学年から中学年にかけては、さまざまな世話をするマネージャーとしての役割はもちろん、全体の計画や管理者としての監督の役割も、親にとって大きいでしょう。
この場合、受験の「主」は親の方であり、子が「従」と考えられます。つまり「親子の受験」です。

しかし、子どもが高学年になってくると、計画を立てたり勉強する環境を整えたりする「主」は完全ではないにしろ徐々に子どもに移り、親は子どもをフォローする「従」になっていくのが理想です。つまり「子親の受験」に移行していくと言えるでしょう。
この頃になると、親は監督としてよりもマネージャーとして、受験生である子どもが「自立」しトラブルなく勉強できるように、手助けすることが主な役割になります。
この「子どもの自立」というのは、実は、中学受験における主な目的の1つです。
受験を通して、自分で考え、自分で行動できる「自立」した人間になることは、志望校合格と同じくらい、あるいはそれ以上に人生において大切なことだと思います。

コーチ・トレーナー

続いて、コーチ・トレーナーについて考えてみましょう。コーチ・トレーナーとは、実際に子どもに算数や国語といった教科内容を指導する役割を指します。塾で言えば、各科目の先生です。
親が家庭内でコーチ・トレーナーになるというのは、子どもがわからなかった時に、教科を教えるという意味です。もちろん不可能ではありませんが、そもそも親は「優秀な先生」になれるのでしょうか?
自分の持っている経験や知識の枠内でしか子どもには教えられませんので、問題がわからない場合は、親も共に(先に)学ばなくてはなりません。中学受験の内容は5年生も後半になるとかなり高度ですから、忙しいお父さんやお母さんがそこまで時間をとることは、現実的にはなかなか難しいと思います。
そして、それができないのならば、勉強する場(塾)や教える人(家庭教師など)を探してくることが必要です。
教えるために時間を取られて、親にしかできない他の役割が疎かになることの方がよろしくないでしょう。

「何」を「どのように」管理するのか?

「良い計画」があっての良いマネージメントです。宿題を出すのは塾ですが、「いつ」「何を」をするのかは家庭の裁量ですので、家庭で学習計画を作らなくてはいけません。
さらに、予習復習を含め、塾が出す宿題が膨大な場合は、やり切れない場合もあります。そんな時は、「どこまで」予復習や宿題をやるのかも考えなくてはいけません。
この「良い計画」とは我が子にとっての「良い計画」です。「塾のカリキュラムに合わせた計画」の元で出している塾の宿題が、やり切れない(場合によっては物足りない)のであれば、塾に相談すべきでしょう。

ところで、家庭での勉強を管理するにも試行錯誤が必要です。例えば、単に「授業の復習」と言っても、いろいろなやり方があります。
まず塾で復習方法を教えているのかどうかを確認しましょう。教えていればその通りにやってみて、教えていなければどうすべきか塾に聞きます。
もしこれといってお勧めの手法がないのなら、監督兼マネージャーである親が、自分の子どものために工夫する必要があります。

その工夫をどうすれば良いのかが難しいと思われるかもしれませんが、最初から完璧にすることは無理と割り切って、とりあえず正しそうなやり方を本やウェブサイトから持ってきて、試してみることから始めれば良いのです。このサイトの各記事で勧めた勉強法などもぜひ試してみてください。
ポイントは、PDSサイクル…Plan(計画)-Do(実施)-See(チェック)を繰り返すことです。

具体的には、まず、「このようにやってみよう」と計画をたてます。この場合、親がすべてを考えて子どもに押し付けるのではなく、必ず子どもの意見も入れましょう。できれば、子どもが自分で考えて、それを親が承認するような形がベストです。
そうすると、その計画を実施する際、「自分で決めたことなので、何とかやり切ろう」とするでしょう。
さらに、上手くいっているにせよ失敗したにせよ、その結果をチェックして、次の計画に生かすことが必要です。
親が自分の目で様子を確認・判断せず、単純な受け売りだけでやっていては、本質的な問題を見逃す可能性があります。
やりっぱなしで放置するのではなく、修正しながら子どもにあったものを見つけましょう。

受験勉強開始当初、子どもは計画作成も管理もできません。しかし継続的に親のサポートを受け、必要性を実感することで、6年生の後半には進捗状況やスケジュール管理の具体的な手法と価値を、学んでいることでしょう。
前述したように、この成長こそが中学受験をする「志望校合格以外」の目的の1つではないでしょうか。

具体的な役割分担

親子の受験と呼ばれ、家族の連携やサポートが結果に響く中学受験では、家庭内で受験を精神的に先導するリーダーを作ることが必要です。現実的には、先ほど述べた「監督」が担う場合が多いでしょう。
基本的に受験勉強は、面白いものではありません。やらされている感を子どもに持たせないためには、褒める、喜ぶ、叱る、嘆く、元気づける、希望を持たせるなどのフォローをしっかりして、「自分一人で受験に挑んでいるわけではない」と意識させることも大事です。

「受験生とその家族」と言うと、母親が受験勉強を先導していて、ともすれば父親が、「もういいじゃないか」と冷静になだめてフォローするといったイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。しかしそれは過去のことで、時代の流れに伴い、家族の関わり方も変化してきています。
特に近年は父親が受験にリーダーとして関与する割合が増えてきたように感じます。
もちろん、「叱るのは母親」「フォローするのは父親」などと、両親で役割を分ける必要は、必ずしもありません。器用な人であれば、一人で使い分けても良いです。
ただし感情で叱らない・褒めないためには、自分の感情をコントロールできる役者であることが求められます(詳しくは次項の褒め方叱り方で説明します)。
とは言っても、さっきまで烈火の如く怒っていたのに、急に優しくさとす…といった演技は家庭ではなかなか辛いものがあります。そのためには役割分担が必要な場合もあると言うことです。
具体的な役割分担としては、「厳しく叱る」と「優しくさとす」、「計画(監督)」と「管理(マネージャー)」、「精密な指導」と「俯瞰的な指導」などの分担が考えられます。

それでは次に効果的な「褒め方」「叱り方」などについて考えていきましょう。

褒め方

効果的な方法

子どもはもちろん、褒められることが大好きです。自分の努力を認められることは、自己肯定感とモチベーションの向上をもたらします。
しかし、脈略もなく単純に、褒めれば褒めるだけ良いというわけではありませんので、注意しましょう。褒め方は効果度別に、次の3つに分けることができます。

  1. 子ども自身も気がつかなかったところを褒める【効果:高】
  2. 子どもが褒めてもらいたいことを褒める【効果:中】
  3. 理屈に合わないところを褒める【効果:低】

子どもが期待しているところを褒めてあげるのも良いですが、子ども自身も「自分はできているのかな?」「これで大丈夫なのかな?」と不安がっているところ(しかも確かに進歩しているところ)を褒めることが効果的です。
大きな成果は誰でも褒められますが、本当に小さな成果は、その子だけをよく見ている親しか褒められません。

例えば、「前回間違えて書いていた漢字が正しく書けた」「2択問題で正解を選べるようになった」など、偏差値が上がっていなかったとしても、間違いなく進歩している箇所があれば、褒めてあげましょう。それによって自信がつくと「勉強の継続」につながり、やがて大きな飛躍という果実を生みます。
そして、その場で褒めるということもポイントです。タイミングを逃すと効果は半減しますので、いつでも褒められるよう準備しておきましょう。

また権威者が褒めれば、子どもには大きな印象が残り、「その気」になります。尊敬できる先生を探しておくことや、子どもが担当の先生を信頼するように、普段から注意しておくことも必要でしょう。
例えば、先生や塾の軽視に繋がってしまいますので、間違っても子どもの愚痴に便乗して先生の悪口を言ってはいけません。

なお、親は権威者にはなれません。かなり上手に科目を教えられたとしても、子どもは塾の先生の方を権威者と考えます。なんだか少し寂しくなってしまう気もしますが、これは仕方がないことでしょう。
しかし、子どもが真に期待に応えたいと思っているのは親に対してですから、親だけができる褒め方があります。権威者とは違ったところを褒め、伸ばしてあげましょう。

叱り方

効果的な方法

褒めることが重要と書きましたが、注意したところをそのままにしていたり、約束を破ったりした場合などは反省させなくてはいけませんので、きちんと叱りましょう。
その際重要なのは、叱る側の親が感情に任せるのではなく、演技して怒るということです。 ここで言う演技とは、自分の感情をコントロールすることを意味します。子どもにとって効果的であると思えるなら、強い口調の怒り方をしても良いです。
あるいは、切々とさとす叱り方や、厳格な態度で接する叱り方など、その時の状況や子どもにあわせた接し方が大切です。

叱ることの目的は子どもに自分の過ちを認識・納得してもらうことです。親が感情のままにぶつかっていくと子どもも興奮し、自分の過ち云々はすっ飛んで感情のまま反撃してきます。
カッとなってまくしたてる子もいれば、むっつりと黙り込む子もいるなど、反抗の現れ方はさまざまですが、いずれも冷静な話し合いにはとてもなりません。これでは叱っているのではなく、「親子喧嘩」になってしまいます。
基本的に子どもが親の言うことを聞くのは、困ったときです。客観的に「自分は困った状況なんだ」と子どもにわからせるためには、感情的にまくしたてるのではなく、しっかりと説明する必要があるのです。

また褒めるときと同じく、その場で叱ることが大切です。瞬間的に演技用の仮面をかぶることに慣れるまではなかなか難しいので、常に心構えをしておくことが大事です。

してはいけない対応

過干渉

子どもが心配なあまり、過干渉になる親は一定数います。やること全てに親がいちいち手や口を出すといった状態は、当然好ましくありません。全てが親任せで、受験を他人事のように捉えたり、無気力な指示待ち人間になってしまう可能性があります。
デリケートな時期であることから、中には親に「うるさいな!」と酷く反発する子どもも出てきます。

また過干渉タイプの親は、成績が少し下がっただけでも、すぐに塾へ怒鳴り込むなど、無自覚のうちにモンスターペアレント化してしまう場合があります。自分たちで理由を考えることもせずに短絡的に行動を起こせば、塾の先生から苦手意識を持たれてしまうリスクもあるでしょう。
過干渉とならないためには、口出ししたい気持ちをグッと堪えて見守ることも、時には大切です。子どもに、自分のことであると言い聞かせ責任を持って行動させることで、考える力を養わせましょう。

例えば、テストの点数が上がらないときは、「自分でデータを見て理由を考えてごらん」と促してみるのも良いでしょう。もちろん一切口出しをしないというわけではなく、質問や相談には乗ってあげてください。あるいはヒントを出してあげるもの良いでしょう。
なぜあがらないのか→いつも間違えているところを把握する(例えば漢字ミスが多い)→それを補う勉強をする(漢字の書き取り)…というプロセスを自分で作らせれば、実行可能な無理のない目標を設定することにも繋げられます。

放任

一方で、子どもの自主性を期待(あるいは過信)しすぎて、放任状態になるようなことも避けましょう。
放任が一定期間続くと、愛情への渇望やそれを原因とした精神的な不安定、受験計画の空中分解を起こしてしまいます。「自分は親にあまり関心を持ってもらえていない」という意識から、勉強や生活に対して自暴自棄になってしまうのです。
特に真面目なタイプで、几帳面な男の子とその家族が、陥る場合が多いような気がします。「うちの子は言わなくても勝手に勉強している」と安心して目を離していたら、いつの間にか気持ちが切れていて、何もやっていなかったということが、十分起こり得ます。

前述した通り、塾は全てを支えられるわけではありません。
成績の低迷などが発覚したときに、「塾は何をしていたんだ!」と怒る親が稀にいますが、塾が何をやってくれるか・くれないかを考えれば、家でのサポートの重要性も浮き上がってきて、必然的に「放任状態」にはなれないはずです。

子どものサポート法

性格でアプローチは変わる

まず、全ての子どもに合う学習法、指導法を含めたサポートというものは存在しないということを心に刻んでください。その子にあったやり方でなければ、どんなに手間をかけたとしても、効果が薄まってしまいます。

また、もちろん、子ども同様に親にも性格のタイプがあり、こちらも受験計画をどう作り上げるか考える際に、重要な要素となってきます。
「親子の受験」である中学受験を効率的に進めるには、親子の相性も大きく影響するためです。

例えばおおざっぱなタイプの子どものミスを叱る時に、感情的なタイプの親は、つい気持ちのまま責めすぎてしまうといった事態を引き起こしがちです。また、子どもの方も強く怒られたことにショックを受けても、何が原因で怒られているのかはいまいちわかっておらず、ミスの是正には繋がらないと言ったことさえあります。
この場合、あらかじめ双方の性格の特徴や相性を意識しておけば、「細かいところを気にしていないだろうから、論理的に説明しよう」「自分の感情を抑えて、冷静に接しよう」など、どう対応するのがベストか考えることができます。
とはいえ、自分がどんな性格か(癖があるかなど)を客観的に考えるのはなかなか難しいので、他の家族に聞くとわかりやすいと思います。

次項からは、具体的な「学習」「目標」「体調」「メンタル」管理の手法について解説していきます。
どのように実践していくのかは、前述のように我が子と自分の性格を踏まえて考えてみてください。

学習管理

必要性と考え方

「学習管理」とは、まずは日常の予復習の状況や宿題をやっているかのチェックです。もちろん、毎日チェックする必要はありません。時々、思い出したように見てあげることで、子どもにも緊張感が生まれますし、何よりも勘違いして無駄なことをしていたなどという状況を素早く改善することができます。
カリキュラムテスト(既習範囲のテスト)や模擬試験の点数の評価・分析・対策も必要でしょう。子どもは親が思っている以上に、点数や偏差値を気にしますが、「なぜそうなったのか」とか「どうすれば改善するのか」などということはあまり気にしません。
ですから復習するにしても、「解説を読んで終わり」となって、同じような間違いを繰り返す場合が少なくありません。ここは親がデータをよく見て、分析し対策を一緒に考えることが大切です。
プリント類の整理なども、必要な管理です。特に低学年や中学年の子どもに任せておくとメチャクチャになってしまいがちです。親が直接手を下すのではなく、やり方を教えて子どもにやらせるという方法もあるでしょう。

なお、子どもの性格によって指導法を変えることはもちろんですが、管理という面では親自身の性格を特に考慮する必要があります。
例えば、大ざっぱなお母さんはコツコツと整理していくような管理方法は向かないでしょう。
親子ともに試行錯誤で良い方向に向けていくものなので、タイプの違う他所の家庭の真似を無理してする必要はありません。

具体的な方法

勉強状況をしっかり管理するためには、まず親子ともに「これから勉強をするんだ」という意識を持たないといけません。
そのため、一種の儀式として、受験勉強を本格的に開始するときに部屋を大きく片付けることをお勧めしています。勉強机の上や近くに、勉強に関する物以外は置かないということです。
これにはゲームや雑誌を箱などにしまって簡単に気が散らないような環境を作るという狙いもありますが、「自分は受験に挑む」という決意を形にするという意味があります。

勉強部屋ではなくリビングで学習させるのも、すぐにご家庭で実践できる方法です。勉強部屋(子ども部屋)より親の目がしっかりと届くので、親にとっては状況把握がしやすいですし、ついつい勉強から気持ちが離れやすい子どもにとっても、強制的にやらざるを得ない環境でしっかりと勉強ができるメリットがあります。

また模試の得点比較など勉強進捗状況のデータ化は、時間的にも技術的にも子どもにはとてもできませんが、志望校選びの際に非常に有用ですので、親がやってあげましょう。
また関連資料の管理も子ども一人の手には余ります。特にプリントの量が多い塾などでは、想像以上のものとなりますので、親まで混乱しないように注意しましょう。

さらに、一覧表を作成し、目につく場所に置くことで状況の「見える化」を図ることも効果的です。覚えなくてはいけないものをペタペタと貼るイメージがありますが、それに加えて、できたことも掲示(あるいは既存の表に丸をつけるなど)すると、励みになって良いでしょう。

目標管理

必要性と考え方

目の前の学習管理と同じくらい、先を見据えた目標管理も重要です。ポイントは、短期的な視点と長期的な視点を持つことです。
例えば、2週間後、2か月後の目標は、すべきことが具体的でやり切ろうという力を与えます。2年後、3年後、あるいは中学以降の展望は子どもに夢や希望を与えることになるでしょう。前述の一覧表についても、目標管理用のものを作ると良いと思います。

ただし、まだまだ将来という感覚が掴めきれていない小学生がモチベーションを保つには、短期的な達成感を重ねていくことが一番必要です。
「偏差値が上がらなければ何にもならないんじゃないか」と思ってしまいがちですが、「今日はこれができた」「今日はこれがわかった」という一歩一歩が、合格につながるという考え方を持たせましょう。

具体的な方法

具体的には、「過去問演習を始める6年生9月時に、過去問の正答率が30~40%以上になるためには」という長期目標を中心に、学年ごとと3か月ごととにメルクマールを置いていきましょう。
「できるだけやろう」という考え方は、自分に限界を決めないようで素晴らしく思えますが、実際にはここまでやろうと思える基準がなければ、いたずらに作業を重ねていてもダメです。ただただ流しているだけとなってしまいがちで、やる気も実力も身につきません。

「本当に身につく勉強法」にも詳しくありますが、大計画・中計画・小計画と計画を何種類か作るのも効果的でしょう。

体調管理

必要性と考え方

季節の変わり目などには大人でも風邪を引きやすくなりますが、中学受験生にとっての環境の変化は季節だけではありません。
例えば受験勉強の開始時、塾に通い始めた時期、クラスが変わった時期、学年が変わった時期などには、様子に注意してあげましょう。

何といっても健康第一ですので、病気になる前に大事をとることが原則です。
調子が悪そうなときに、「塾を休んだらついていけなくなるかも…」と思って、無理に行かせてしまう人がいますが、結果的にそれでこじらせて2、3日潰れるようでは元も子もありません。
結果的には効率的であることが多いので、我慢しないで体調不良にはすぐ対応しましょう。

具体的な方法

「もう寝なさい」「気を付けなさい」などの声がけをして風邪を引かせないようにするだけでなく、虫歯や蓄膿症、近眼などについては早期治療が必要です。
受験ギリギリになれば、歯医者に通うひますらありませんし、痛みを我慢しながらの勉強や試験はパフォーマンスを大きく落とします。
また受験シーズンは感染症シーズンにも重なりますので、インフルエンザの予防注射は必要かもしれません。

特に体調不良の兆候を見せない普段の生活の中でも、休養日や休憩時間を必ず決め、メリハリをつけることは心がけてください。体調不良の芽や体力の低下だけでなく、集中力を切らすことも防ぎます。
ストレス解消のためには、散歩などに時間をとってあげるのも良いかもしれません。

メンタル管理

必要性と考え方

メンタル管理も非常に大きなポイントです。合格までの道のりは決して平たんではありません。一部の特殊な例を除き、大部分の子が「山あり谷あり」を繰り返します。
もちろん反省は必要ですし、ずっと谷で停滞しているようなら大いに改善すべきですが、失敗したときこそ軌道修正のチャンスだと思うようにして、過剰に落ち込ませるようなことは避けましょう。
基本的に勉強を嫌がったり、受験を他人事のように思っていた子どもが打ちのめされているときは、自分の非を実感しているときですので、上手にフォローしてあげてください。

むしろ一度も失敗していないという場合は、自己分析がしっかりできていないか、水面下に問題が隠れているだけという場合が少なくありません。あるいは、放任状態にあり、子どもが失敗を隠しているということも考えられますので、気を配ってあげてください。
一方、子どもの成績やメンタルの調子が良い時はあまり手を出さない方が、本人のペースを乱すことがなく良いでしょう。

具体的な方法

例えば試験の結果が悪かったとき、一番にすべきは叱ることではなく、なぜ悪かったのか、何がいけなかったのかを一緒に考えてあげることです。
考えて原因にたどり着いたとき、例えばサボっていたことが原因であったとすれば、叱ることになるかもしれませんが、たとえ落ち込んでいたとしても、それは必要なことです。
その際は効果的な叱り方で書いたように、単に責めるのではなく本人を次のステップに結びつけるような、感情と切り離した叱り方が必要です。

まず単純に慰めればいいのか、それとも叱咤激励すればいいのか、声をかける前にあらかじめ子どもの性格を考え、声のかけ方を考えておきましょう。メンタルサポートの手法は、性格によって対応がかなり変わってきます。

親自身に必要なこと

自身のメンタル管理

必要性と考え方

受験が近づくにつれ、どうしても子どもは不安になり、精神的にも揺らいでしまいます。それを支えるためには、まず親御さん自身が腹を据えましょう。親がパニックを起こせば、子どもにも伝染します。
例えば、志望校合格はあくまで1つの道にすぎませんので、次善の策を考えておくということも重要です。

一番不幸なパターンは、親だけが「どうしてもA校!そうじゃなければ受験に意味はない!」となって、他の考えが見えていないときです。志望校に合格すれば良いのですが、落ちたときに「それでもB校は受かったのは偉い」「落ちたけど、頑張る習慣をつけることができた」など、子どもへのフォローする言葉が出ません。
実情としては、親が自分の中で「ここでもいいんじゃないか」というラインを持っておくくらいが、望ましいです。
ただし甘えを招いたり士気を下げる可能性があるので、あくまで心の中にとどめて子どもには言わないでおきましょう。

具体的な方法

受験は始めるのは簡単です。塾に入ればとりあえず受験勉強というレールに乗ることはできますので、スタートを切れます。しかし受験勉強に費やして来た時間や費用を思うと、やめることは容易ではありません。
子ども自身も友だちに対して顔が立ちませんので、勉強は当然したくないのですが、受験をやめたいとはなかなか言いません。
だからこそ、子どもが「中学受験をやめたい」と言ってきたとき、子どもの気持ちを冷静に聞いて、その子にとって真にベストと思われるのであれば、躊躇せずやめることができる覚悟を持つことが必要です。

とは言っても、親は「勉強はしたくない、でも受験はやめたくない」という子どもの態度に、非常にやきもきすることが多いのが実情です。
どうしても疲れたときは、子どもの耳がないところで親同士が励まし合うことも、気分転換になります。

親同士の連携

必要性と考え方

生の情報は大切ですが、同じ年の子、特に志望校が同じ場合はライバルになってしまう場合があります。
子ども同士は仲良くなることも多いですし、親同士で関係を築くことが難しいというわけではありませんが、子ども同士の点数の差などをコンプレックスに思って、精神的に自滅してしまうこともありえますので、注意しましょう。
深く関わるというよりは、一線を引いて接する人が多いようです。

具体的な方法

生の情報を聞くには、受験年度が離れていない1つ上の年齢の子の親に、実際にどうであったかを聞いてみるのが良いでしょう。
ただし、良いことしか言わない場合がままあります。これは何も足を引っ張ってやろうという悪意があるわけではなく、単純に「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉の通り、綺麗な思い出として昇華されてしまっているからです。
全て鵜呑みにして安心したり、落ち込んだりしないように注意しましょう。

情報収集

必要性と考え方

中学受験において、情報は非常に大きな武器になります。情報源は受験生本人、先生、模試、講演会、学校訪問、ネット、書物など、さまざまあります。
ただし、人の話や記事などの二次情報は、本当の話なのか尾ひれがついているのか、真偽のほどはわからないものが少なくありません。
1つの情報源だけで判断せず、いくつもの情報を総合的に判断する慎重さは必要でしょう。

最も重視すべきなのは、一次情報です。
例えば子どもの勉強への熱意がどの程度であるかという情報が欲しいとき、塾の先生から様子を聞くことももちろん大事ですが、一番参考になるのは本人が勉強をやっている姿です。
集中度合いや手の動かし方、速さなどを観察してみましょう。きっと二次情報だけでは知り得なかったことを、見つけられると思います。

具体的な方法

合否可能性については、模擬試験の数値が客観的かつわかりやすいデータとして、参考になります。
またテストの内容や解く順番・速度なども、苦手分野をどのように克服していくか、勉強をどのように進めていくべきかの計画を考える時に、非常に役立ちますので、その都度チェックするようにしましょう。

また塾の先生と良い関係を確立させれば、学習管理面、目標管理面、メンタル管理面にメリットをもたらすこともあるでしょう。なお、先生と面談する機会を持つ時は、実り多いものにするための下準備が必要です。
例えば苦手単元のことを相談したい時に、「とにかく苦手なんです」など聞き方が大ざっぱであれば、先生も具体的なアドバイスができず「とにかく練習量を積んでください」など大ざっぱな答えしか返ってきません。状況を詳細に、具体的に説明して相談することが大事です。
またふらりと立ち寄るのではなく、事前にアポイントをとりましょう。先生も準備する時間があれば、過去の模擬試験の状況など調べてくれるはずですので、より実情に沿った話ができます。

また、森上教育研究所「親のスキル研究会」などに代表される受験情報の講演会での情報収集も役に立つでしょう。

まとめ

中学受験生がやらなくてはならないことがらは質・量ともに、本来小学生がすべき範囲を大きく超えており、親御さんの支えがなければ抱えきれません。親子ともに苦労する場面もあるでしょうが、愛情を持って時に優しく、時に厳しく接することがポイントです。成し遂げたときの成長と感動はひとしおですので、目標に向かって頑張りましょう。

3ヶ月で伸ばす!中学受験 国語の記述アプリ|小泉浩明先生監修「KAKERU PLUS」

この記事の監修者

小泉浩明 (こいずみ・ひろあき)

1956年東京生まれ。平山入試研究所所長・森上教育研究所研究員。桐朋高校・慶応大学卒業後、米国にてMBA取得。現在は「小泉国語塾」の運営、執筆、教務研究を行う。著作に「必ず出てくる国語のテーマ」(ダイヤモンド社)他。

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