ラストスパートどうかける?6年生2学期の過ごし方
長い夏休みが終われば、2学期です。気持ちを新たに一層勉強に励んでいきたいところですが、計画や目標がしっかりしていないと、上昇気流に乗れず低迷しかねません。
それでは、志望校合格のためには、2学期はどんなことが必要なのでしょう。学年別に、具体的な勉強法や親がすべきサポートを紹介します。本記事は6年生編です。
2学期とは
2学期の考え方
受験期での位置
6年生の2学期は、総まとめの時期です。
具体的には、新分野の学習、苦手分野・単元の学習、忘れないための学習、過去問演習、志望校の傾向調査と対策、時事問題の学習等々、やるべきことが目白押しです。
受験当日を除けば、受験期の中で最もスケジュールと精神が張り詰め、いくら時間があっても足りないという状態になるでしょう。
同時に、この時期は第一志望校の決定の時期でもあります。まずは、夏期講習を経た夏休み明けのテストで、今まで積み重ねてきたものの結果や志望校合格の現実的な可能性を判断します。
さすがに本人も残り時間を考えれば「自分事」として焦ってきますし、周囲もみんな頑張っている中で刺激を受け、勉強自体を嫌がることはあまりないでしょう。
また練習問題の反復がはかどらなかった子が、過去問に本格的に取組みだすと、「去年なら受かった!」など、ゲーム的な面白さを感じられ、勉強に「ハマる」ことさえあります。 精神的に幼く、全く勉強をせずに親を悩ませていた男の子が、夏休み前とは別人のように自主的に勉強に打ち込み出す場合もあるでしょう。
2学期のスケジュール
前述した通り、6年生の2学期は大変忙しい期間です。効率的な動き方をするためには、まず夏休み明けの成績などを見て第一志望校を決め、それから勉強をどう進めていくか考えるというプロセスを踏みましょう。
志望校を念頭に置かないで、ただがむしゃらに勉強をするだけのスケジュールを組むと、志望校の試験に全く出ない単元に時間を割いた結果、肝心の頻出単元の穴埋めがやりきれなかった、という本末転倒な事態を招く恐れがあります。
それではポイントを踏まえた上で、6年生の2学期にはどのようなイベントがあるかチェックしてみると、下記の通りです。
- 過去問演習開始
- オプション講座(志望校対策講座)の開始・選択
- 学校別や合格可能性を判定する公開模試の頻度上昇
- 時事問題の勉強の開始
多くの新たな勉強がこのタイミングから始まります。過去問演習については、第一志望校だけでなく受ける学校全ての問題を、少なくとも2年分は解きましょう。
時事問題については、日頃からニュースをチェックするのはもちろん効果的ですが、情報の取捨選択が難しいため、もし塾で専門講座が開かれるようでしたら、受講をおすすめします。
一方、オプション講座と公開模試については、必ずしも受けた方が良いわけではなく、むしろ慎重に選ぶ必要があると言えます。
通常、オプション講座は一つのトピック(単元、学校など)にスポットを当てて、その部分に特化したプロ講師が、徹底的に解説・補強してくれます。自分の弱点や志望校にピタリと合っているものがあるのならば、非常に有用です。
しかし、オプション講座で扱うのが自分の得意単元だったとしたら、本人にとってはわかりきった内容を繰り返されるだけにすぎませんので、受講することによって、逆に限りある時間を無駄に使うというデメリットが生じます。
これは志望校別講座や志望校別模試も同様です。難関校を攻略するためのハイレベルな講座だったとしても、自分がその学校を受けないならあまり効果はありません。
仮にオプション講座名に「受験に頻出」などと冠されていたとしたら、絶対に受けるべきだと思われるかもしれません。その時にこそ一度止まって、本当に必要であるかどうかを考えましょう。
必ずしも塾の授業>家庭学習というわけではなく、自分の志望校の過去問や苦手単元を自主的に勉強する方が、結果的に合格に近づく場合もあります。
公開模試も同様に、受けるメリットと受けないメリットをはかりに掛けて、どうするか考えるべきでしょう。
模試は丸々1日時間を食いますので、受ければ受けるだけ良いわけではないからです。むしろ、復習できないテストを受けるのは時間と労力の無駄です。
模試当日と復習にかかる所要時間を考えると、現実的には多くても1ヶ月に2回が限度でしょう。
さらに詳しいスケジュールについては、「中学受験のスケジュール」をご覧ください。
体調とメンタル面
夜遅くまでの勉強で体調を崩しやすい時期です。またどんどん寒くなっていきますので、風邪やインフルエンザにも注意しましょう。
意外な落とし穴が、怪我です。実はこの時期、運動会や体育の授業などで、捻挫や骨折をする子が多くいます。これは勉強漬けで自覚のないうちに体力が低下していたり、溜まったストレスから無茶な動きをしてしまうことが原因です。利き手を骨折してしまったら洒落になりません。
風邪などと違ってあまり具体的な予防策がありませんが、「そういうこともあり得る」と必ず念頭においておきましょう。そう意識させて本人が注意すれば、事故の防止に少しは役立つと思います。
メンタル的には、受験が近づくにつれナイーブになっていきます。
勉強をサボるよりも、「勉強しなくちゃ」と自分の限界以上に頑張りすぎて体調を崩してしまったり、心配のあまり十分に眠れなくなるケースの方が多いでしょう。ストレスを貯めない工夫が必要です。具体的には「体調とメンタル管理」もご参照ください。
2学期に必要なこと
2学期の忙しさは、ここまでにも何度も繰り返してきましたので、おわかりいただけたと思います。そして多忙なこの時期に何よりも先に実践すべきは、やるべきことの優先順位を考え、順位が低いものについては「捨てる」ことです。
無理に全てをこなそうとすると、あまりの量にパニックを起こし、何も手がつかなくなるといった状態に陥ってしまう危険性があります。
これは受験を諦めることでも手を抜くことでもありません。効率的な動きのためには、必要なことです。
例をあげるとしたら、「反復演習が必要な苦手科目以外は宿題をしない」「定期的に授業を休む」「オプション講座は無理に受講しない(するとしても単科受講にする)」などが考えられます。
他には、授業が難し過ぎるなら、志望校別特訓のレベルを下げるのも1つの方法でしょう。まずはその学校に全力を注ぎ、確実に合格を取れるようにしてください。
とはいえ、全ての子どもに共通した、“やるべき・捨てるべき”と言った項目はありません。あくまでもその子に合わせた調整が必要です。
塾の先生ともよく相談し、自分がすべき勉強に注力するようにしてください。
勉強時間の目安
本人の資質や難関~中堅まで、それぞれ目指す学校によっても、望ましい勉強時間は変わってきますが、6年生ではできるだけ多くの勉強量が必要です。
ただし睡眠時間を最低8時間とることと、リフレッシュの時間をとることは絶対です。メンタルや体調を崩しては元も子もありません。
また、本当に身につく勉強というのは、時間だけでなく集中の深さも大きく影響してきます。
時間を確保するだけではなく、質の高い勉強も追求したいところです。
2学期の動き
勉強法
国語
学校によっては国語も出題傾向が顕著です。過去問で志望校の頻出事項をチェックし、自分が苦手な分野や文種があれば、優先的に勉強しましょう。
女子校では語句、文法、文学史などの知識問題が多く出題される傾向があります。しかし、こうした知識はあまりに膨大で、やり始めたらきりが無いので、特に志望校研究が必須と言えます。
例えば志望校の出題傾向をチェックして、文法なら「文の組み立て」「敬語」、文学史なら「代表的な作家と作品」など、あらかじめここまでは勉強するというラインを引いておきましょう。
「ラインを引く」と言えば、試験中や過去問演習時に抜き出し問題をどこまで追うか(時間をかけるか)というのも、同じく許容範囲を設定すべきです。
抜き出し問題は文章中に確実に答えがあるので、ついやりたくなってしまうとは思いますが、だらだらと探して時間を費やすよりも、その時間を記述問題にあてた方が点数をとれるということがままあります。
全体をよく見て、時間バランスには注意しましょう。
また、問題文の読み直しなどが面倒だと思ってしまうため、国語の復習をしっかりできているという人は、あまり多くありません。
国語だけに限ったことではありませんが、過去問や模試を受けたら、必ず復習することを特に意識しましょう。
それからもう一つ重要なのが、語彙力が十分であるかという点です。この時期に語彙力が不足しているとかなり厳しいですが、それでもそのまま放置して入試に突入するのはあまりに無謀です。
熟語などの不足は塾のドリルで復習し、1日10~15分の言葉の勉強を入試まで継続して行いましょう。
算数
他の記事でも折に触れ書いてきましたが、算数は中学受験の1番の要となる教科であり、同時に演習を積めば積むだけ力になる教科です。
そのため多くの受験生が最も時間をかけたいと思う教科ですし、実際かけている人が多いと思います。
しかし、算数に行き詰まっているので、理科社会を放置して算数に注力するという5年生までのやり方は、この時期ではもう通用しません。
合格は総合点で決まりますので、例えば「算数は2点伸びそうだが、理科は5点伸びそうだ」というときは、「科目間バランス」を重要視し、理科をやるべきでしょう。
「算数の実力を伸ばす」ことよりも、「志望校の合格者最低点を超える」ことが第一の目標です。
では、算数にばかり時間を取られないためにはどうすれば良いのでしょうか。
まず、最初に全体にかける時間数を割り振り、その時間内にできることを効率的に行うことが必要です。
かける時間はそれぞれの状況次第ですが、例えば算数や社会が得意で、国語や理科が苦手という人であれば、算3:国3:理2.5:社1.5などが考えられます。
難関校では「数の性質」「規則性」「立体図形」などが頻出するなど、算数も学校によって出題傾向が顕著です。
自分の志望校の特性がわかったら、次は時間内でいかに得点するかの練習を積み、解き方だけでなく「捨て問」の感覚も磨きましょう。
苦手単元はすでに使用した問題集や参考書を使用し、新しいものは極力避ける方が効率的です。
復習の問題数も、奇数問題(あるいは偶数問題)のみに絞るなどして、できるだけ効率的な復習を心がけましょう。
こうして時間とやる範囲を決めたら、あとはひたすら演習あるのみです。
理科
過去問で志望校の頻出事項をチェック→苦手な単元を優先的に勉強、というスタイルは他教科同様です。
特に近年、入試での記述問題増加が目立ちます。暗記科目と思われがちな理科ですが、論理的に生物の特徴や気候等の現象を説明できるような力が必要です。
普段の演習の中でも、「覚えたことを書く」のではなく、「考えたことを書く」ように意識しましょう。
また、塾のドリルや試験の復習とは別に、時事問題として取り上げられそうな新聞の記事に目を通す時間を、勉強として取りましょう。社会の時事問題より理科の時事問題の方が、子どもには重要度が測りづらいので、親がまず新聞をチェックして記事を指定などすると、意識すべきニュースのポイントが絞れるかもしれません。
なお、理科の中学入試も教科書からよく出題されますので、時間を見つけて、教科書の写真や地図、表、グラフなどの説明をしっかり読みましょう。
知識の定着を図るには、例えば日能研の「メモリーチェック」などを使い、同じことを繰り返す勉強法も重要です。2学期に先駆けて、夏休みくらいから使い始めても良いでしょう。
社会
社会の入試問題の多くは基礎学力を問うものです。基礎学力の有無が合否を決めるので、過去問で異様に難しい問題が出てきたとしても、特別な対策は必要ありません。
特に難問が出やすい学校もありますが、他の人も滅多に解けるものではないというくらいに思った方が良いですし、実際そうです。
無意味かもしれないところを深掘りするよりは、基本を盤石なものとすることに時間をかけたいところです。
時事問題については塾の講座や参考書を読むのも良いですが、新聞を毎日読むことは読解力を養うことにも繋がりますので、大変望ましいです。
とはいえなかなか時間も取りづらいですし、小学生には難しい言い回しや題材も多いので、無理せず読むのは1日10分でも良いでしょう。
時間が無ければリード(前文だけ)、その時間も無ければ一面の見出しに目を通す程度でも構いません。継続することが大切です。
じっくり読むべきだと思われるのなら、わかりやすく書かれた子ども新聞もおすすめです。
教科書の熟読や定着させるための繰り返し学習が重要なのは、理科と同じです。
算数に比べるとどうしても優先度が下がってしまいがちですが、歴史など面白さを見出しやすい教科でもありますので、他教科の息抜きのように活用することも良いでしょう。
親のサポート
学習サポート
学習面については、「捨てる勇気」をまずは親が持ちましょう。子どもからはなかなか言い出せない場合もありますが、親の理解があれば一緒に効率的なスケジュールを組むことができますので、精神的にも楽になります。
一方、親も子どもがやれる量ではないという認識を持つことで、「手を抜いているのではないか」という疑心から解放されます。
志望校の選定の基準となるのが、過去問演習です。過去問は品薄になることも予想されますので、早い段階から手配してあげましょう。
本人の志望校に成績が伴っていない場合や、不安から必要のないオプション講座を受けたがる場合など、時には子どもを諭さなくてはいけないこともあると思われます。
感情的になりやすい期間でもありますので、お互いに冷静によく話し合って進めていくことが大切です。
体調とメンタル管理
徐々に寒い季節になって行きますので、風邪など引かないよう体調に気を使ってあげるのはもちろんですが、メンタル面も同じくらいか、あるいはそれ以上に注意が必要です。
前述した通り、子どもは受験が近づくにつれ相当ナイーブになっていきます。精神的な不調があると勉強が上手くはかどりませんし、放っておけば体調不良も招きます。
ストレスがたまらないように、様子をしっかり確認し、必要だと思われる場合はすぐに気分転換をはかってあげましょう。
例えば親子での散歩は、体を動かすことと、コミュニケーションが同時に取れますので、オススメです。
学習管理面とも重複しますが、親が「大変でしょう」とねぎらったり、「宿題は全部やらなくていいよ」とある種の許しを与えてあげることも、子どもを安心させます。
また緊張感のある状態が続くことによって、支える側である両親も焦燥感に駆られるなど、ストレスを感じているでしょう。自覚がない場合もあるかもしれませんが、親がカリカリしていると子どもにも伝染してしまいます。
お母さん(お父さん)自身も必ずリフレッシュの時間をとりましょう。
情報収集
2学期にも、イベント(講演会、合同学校説明会、学校説明会、文化祭など)が開催され、募集要項・パンフレットの配布なども行われています。
6年生のこの時期は、週末もほとんど特別講座や模試、自主学習の予定が入っていて、なかなか時間を作るのが難しいと思われます。
ただ学校説明会などで、その年度の試験についての情報(例えば「今年は記述問題を増やします」など)を開示する場合もありますので、受験する予定の学校については、親御さんだけでも説明会に行くようにしましょう。
なお、収集した情報を判断する時は、一つの情報だけでなく複数を組み合わせ、判断すべきでしょう。
また、まずは譲れないポイントにそぐう学校をピックアップし、学校ごとにそのポイントに関する数値や特色などを具体化するという手順を踏むと、子どもにとって良い学校であるかが、比較もしやすくわかりやすいです。
例:
Cちゃん:英語に非常に強い興味がある。将来は国際的な仕事に就きたくて、私立中高でそのための力を養いたい。
- 英語に力を入れている中学・高校を探す
X中学、Y中学、Z中学が候補に上がる。
- 具体的な実績などをチェック
英語のカリキュラム、ネイティブの数、英検合格者の数、海外の大学の入学者の数など。
- 比較・検討
海外大学入学者はX中が最も多いが、帰国子女数も最も多い。対して英検1級、準1級合格者やネイティブ教師の数は、Y中が突出して多かった。
しかし、説明会で質問してみると、X中の海外大進学者は実はほぼ帰国子女の実績。帰国子女ではないCちゃんは、基礎から英語を身につけようと思い、第一志望をY中に決定。
塾との連携
具体的な受験校について、いよいよ決めていかなければならない時期です。塾の先生とよく話し合って、第一志望校や併願校を決めていきましょう。
その際、塾が薦める学校とお子さんや親御さんが希望する学校が一致しているかどうかが、まずはポイントです。
力がある子どもの場合、塾は実績確保のためにも難関校を薦めたくなります。実際、合格する可能性も高いかもしれません。
しかし、いくら偏差値が高くても、本人が希望していなければ受験に悔いが残ります。ここはやはり、まずは本人、そしてご両親の希望を優先していることが大切でしょう。
次に重要なのが、第一志望校に合格する可能性がどのくらいあるかということです。
これは模擬試験の結果や過去問の合計得点によって判断していきますが、塾の先生が経験豊かであれば、先生の意見も加味して考えるべきでしょう。
さらに、「合格した場合どうするか」「不合格の場合どうするか」「この学校は滑り止めになるのか」など、各学校についてさまざまな可能性を考えた上で、併願校を含めた受験校を決め、受験カレンダーが完成します。
よく考えた受験カレンダーであれば、安心して受験できますから、ここはしっかり作成していきましょう。
受験校の他にも相談することがあると思いますが、そうした場合もなるべく具体的に行うというのは、4・5年生の時と同じです。
例えば、お子さんが算数でケアレスミスが多いという悩みがあったとしましょう。この時、「どうしたらケアレスミスを無くせるか」という漠然とした相談だと、「しっかり問題を読む」「しっかり計算する」という漠然とした答えが返ってきがちです。
そうではなく、答案用紙等を持参して、実際にミスしているところを示しながら質問すると、「問題文の条件を読み落としている」とか「数字が汚くて写し間違えている」などという見解が出てきやすいでしょう。
そうしたら、「ではそれはどうしたら直せるのか」とさらに質問でき、問題解決に大きくつながっていくのです。
なお、塾と相談する前に、何を相談すべきか(子どもが何を聞いて欲しいかも含め)子どもとしっかり打ち合わせすることも必要です。
まとめ
以上が2学期の過ごし方のポイントです。いよいよ間近に迫った受験に、子どもも緊張や焦りが大きくなってきていることと思います。そんなこの時期こそ、親の声かけやサポートが響いてきます。親もやることが山積みで大変ではありますが、悔いなく本番を迎えられるよう、全力で応援してあげてください。
この記事の監修者
小泉浩明 (こいずみ・ひろあき)
1956年東京生まれ。平山入試研究所所長・森上教育研究所研究員。桐朋高校・慶応大学卒業後、米国にてMBA取得。現在は「小泉国語塾」の運営、執筆、教務研究を行う。著作に「必ず出てくる国語のテーマ」(ダイヤモンド社)他。
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