ここで土台が作られる!4年生2学期の過ごし方
長い夏休みが終われば、2学期です。気持ちを新たに一層勉強に励んでいきたいところですが、計画や目標がしっかりしていないと、休みモードから切り替えられず、だれてしまうこともあります。
それでは、志望校合格のためには、2学期はどんなことが必要なのでしょう。学年別に、具体的な勉強法や親がすべきサポートを紹介します。本記事は4年生編です。
2学期とは
2学期の考え方
受験期での位置
そもそも長い受験期の中で、4年生の2学期とはどのような位置にあるのでしょうか。
おそらく受験勉強を始めてからまだ1年以内という人が多いと思います。ようやく塾通いに慣れてきたところ…という子どももいるでしょう。しかし、いずれにしてもこの期間は、受験勉強の基本スタイルを身につける時期と思ってください。
具体的には「集中して考えられる習慣」と「継続して勉強できる習慣」を確立させたいところです。
最初はおそらく、どういう状態が集中と言うのかがわからないと思いますが、徐々に感覚を掴んでいけます。また、継続して勉強する時間の目標は30分〜1時間くらいを目指すと良いでしょう。
受験勉強は単純に時間をかければかけた分だけ、力がつくというものではありません。日々の勉強を「意味のある学習」とするには、どれだけ集中して勉強できたかという「質」も重要視する必要があります。
極端な例で言うと、集中力が途切れ途切れになりながら、10時間机に向かっていた子よりも、3時間みっちり集中して勉強をしていた子の方が、成績が良くなるということも十分にあり得ます。
つまり「集中の深さ×持続時間」という式で求められる面積を、どれだけ大きくできるかが勝負のカギになるのです。
また、勉強する際には「なぜ」を考えることを意識して、論理性のレベルアップを狙いましょう。
さらに知識を「点」ではなく「面」として体系的に覚えることも、応用力を養う上で大事です。
例えば、Aくんは「アリの足は6本」「蝶の足は6本」「蜘蛛の足は8本」…などと、一つひとつの虫の特徴を一対一対応で、繰り返し覚えていました。しかしアリ、バッタ、蜘蛛の写真を並べられ、「昆虫でないものはどれですか、選んだ理由も書きなさい」という問題が出た際に、困ってしまいました。
一方、Aくんのように暗記せず、「アリの足は6本」と学んだときに、蝶や蜘蛛と比較して考えていたBくんは、「蝶は足が6本あるが、蜘蛛は8本。なぜだろう」と思い、先生の説明する「6本の足と触覚があり、頭・胸・腹に分かれている」という昆虫の特徴をしっかり押さえていました。
問題には、特徴を直接的に学んだわけではないバッタも出ましたが、写真を元に共通箇所を発見し、選んだ理由も含めて正解することができました。
このように、実際の問題に対して知識を応用させるためには、「なぜそうなるのか」の理屈がわかっていなければ意味がありません。誤った勉強法のまま突き進んで行ってしまっては取り返しのつかないことになってしまいます。
1学期と夏休みで「塾に慣れる」という、最初期の辛さを頑張れた4年生の2学期こそ、一歩進んで応用力を培うための勉強法や考え方の土台を、確実に作るチャンスであるのです。
2学期のスケジュール
秋〜冬にかけて、各中学校は学校説明会や見学会、体育祭、文化祭などのイベントを多く開催します。
上に受験を経験した兄姉がいなければ、4年生ではまだまだ親子ともに受験ノウハウも不足しているかと思いますので、情報収集も兼ねて、志望校以外にもいろんな学校へ行ってみると良いでしょう。
特に子どもには文化祭がモチベーションを高める上で、効果的です。受験情報誌を読むだけでは校風や中学校生活がピンときていない子どもも、文化祭では楽しみながら、生の空気に触れられるため、「自分がこの学校に行ったらどうなるんだろう」と将来に関心を持つきっかけとなるかもしれません。
勉強に関しては、塾のスケジュールもそれほど忙しくありません。
各教科をどう進めるか、具体的には後述しますが、中学受験の中心となり、とにかく演習量を積む必要がある算数でも、1つの難問にじっくり時間をかけられる時期です。
同じように国語でも、読書を楽しみながら語彙力を養うという5、6年生ではとてもできない、ゆったりとした勉強ができます。
理社は5年生の時に、一度学んだものが再度出てくるので、それほど本腰を入れて勉強しなくても大丈夫でしょう(もちろんしっかり授業を聞くことと、家での復習は前提ですが)。
また宿題などもまだそんなに多くはないでしょうから、さまざまな「実体験」をする好機でもあります。家族で社会科見学も兼ねた旅行に出かけたり、実験教室などのイベントに参加してみたりするのはこの時期が最適です。
さらに詳しいスケジュールについては、「中学受験のスケジュール」をご覧ください。
体調とメンタル面
勉強は心体の健康あってこそはかどるものです。
4年生では、スケジュールがハードになる5年生、6年生に向けて、体力をつけましょう。ご飯をよく食べよく眠り、運動もしっかりすることが大切です。
メンタル的には、塾や勉強に慣れてくる頃合いです。勉強に楽しみを見出す子もいますが、 中だるみしてしまう子も出てきます。後述の親のサポートの項目もチェックしてみてください。
2学期に必要なこと
子どもはまだ幼いため、何か物事を考えるとき、自分に重ねてみないとあまりピンときません。裏を返せば、体験の幅が広い子どもはそれだけ深く物事を考えることができるということです。
そのため、家事手伝いやスポーツなど日常の中でできることはもちろん、キャンプや博物館に行くなどのレクリエーションも含めたさまざまな体験をこの時期に積ませてあげると、あとで大きな力になります。
辞書、辞典を常に引けるよう用意しておくことも、体験を積ませるためのポイントです。わからない言葉が出てきたときに、その意味をすぐ知ることができるだけでなく、「わからないことを自分で調べる」ということも、合わせて学べます。
繰り返しにはなりますが、4年生は学びの基礎を固める時期ですので、いかに楽しめるか、いかに勉強に興味を持ってもらえるかが、重要です。むしろあまり「勉強、勉強」とならないことこそが、必要と言えるかもしれません。
勉強時間の目安
勉強は時間だけでなく集中の深さも考えなくてはならないと、一度書きました。
それでもあえてメルクマールを用意するとなると、4年生では「週6時間」程度が目安になるかもしれません。
ただし、本人の資質や、それぞれ目指す学校の難易度によっても、望ましい勉強時間は変わってきます。この6時間というのはあくまで参考値として考えていただいて、その時間を確保することよりも、質の高い勉強をどうすれば良いかというところを追求して欲しいです。
2学期の動き
勉強法
国語
何と言っても漢字の書き取りや言葉の勉強により、語彙力を強化しましょう。語彙力は読解にも記述問題にも必要な基礎力であり、最終的にこれがあるかないかで国語の伸びは大きく変わってきます。
また、本は時間がある今しか読めないと思ってください。受験を意識して、難文・長文を無理に読むよりは、子どもが自分で選んだ好きな本の方が、読むという行為自体を楽しめるので力になります。
家庭学習としては、読解問題のプリント(テキスト)演習も良いですが、模試の結果を含め、復習に重点をおくことが大切です。問題集をいくら解いても、やりっぱなしで放置すれば、せっかくの学びが根本的な理解に結びつきません。
また成績は上がらないのに、「勉強したつもり」にはなっているので、イライラの原因にもなってしまいます。親御さんから「復習をしよう」と声をかけ、見守ってあげましょう。
受験モードに本格的に入る5年生に向けた準備としては、直感で読んだり書いたりするのではなく、少しずつ「なぜ」を考えながら「論理的」に読む、解くことを実行しても良いと思います。
算数
国語でいう語彙力に当たるのが、算数では計算力です。
いかに正確にスピーディに計算できるか、レベルの向上を目指すべく、家での練習を欠かさないようにしましょう。
算数は一度つまずいたところをそのままにすると、どんどん進んでいってしまい、次に出会うのは、受験が近づいてくる6年生中盤からの入試演習…ということが有り得ます。しかし6年のこの時期に、苦手単元が多く残っていると、大変なことになります。 そんな事態を避けるためにも、塾の復習は必ず行ってください。反復演習にも時間をかけましょう。
なお、反復演習はどうしても単調になりがちですが、どうしてそうするのかの理由も考えて勉強することがポイントです。
丸付けの際、解答の数字を単純に確認するだけではなく、解法の流れをしっかりとらえましょう。こうした深い理解が無いと、問題が複雑化してくる5年生、6年生で太刀打ちできなくなってきてしまいます。
理科
塾でも学校でも、授業を受ける際には、「なぜ」という視点を持つことを心がけてください。狙いは、科学的に物事を考えられる「理科の頭」を作り上げることです。
また勉強する時だけでなく、実生活の中でもこの理科の頭を意識してみましょう。授業で学んだ内容を思い出し、生活の中で不思議を発見してみると、理科への関心が高まります。
また、家族で博物館に行く、キャンプをするなどの「実体験」は、理科はもちろん、すべての科目における「考える力」を養います。
受験勉強期間内では、比較的余裕のあるこの時期、休息や息抜きも兼ねて、少し遠くにお出かけしてみるのはいかがでしょうか。
社会
社会は気候と特産物、歴史と土地など、トピック同士が関連づいてくることが多く、知識を体系的に確立させる必要が、他教科以上にあります。
4年生のこの時期、おそらく多くの塾のカリキュラムでは、地理の勉強をしているでしょう。地理の基本は日本地図ですが、この勉強の際に役立つのが、白地図です。
具体的には、都道府県の名称、位置、形を覚える際に、用意した白地図に直接書き込んでいきましょう。手作業を入れることで、記憶に染みつきやすくなるメリットがあります。 パズルを完成させるような感覚で、時間のあるときに楽しみながらするのが良いです。
また理科と同じく、旅行に行った先で、本人も勉強と思わないような勉強(例えば世界遺産を訪れるなど)をすることが効果的です。体験を通して「自分事」とすることで、知識を引き出しやすくします。
親のサポート
学習サポート
学習をサポートするためには、体験しやすい環境を作ってあげることが大切です。
お手伝いやイベントへ、積極的に子どもを誘ってみましょう。
また、日常会話であえて小学生にとっては難しい言葉を使ってみることも、さりげないサポートとなります。子どもが、どういう意味?と思って質問してきたらしめたものですし、わからない言葉があったときに、前後の言葉を参考に文脈を読み取る訓練にもなります。
体調とメンタル管理
上述した通り、小学4年生の2学期は、受験期全体から見ればまだ序盤です。受験までは残り2年半もの長い道を頑張っていかなくてはなりません。
子どもはその期間の長さから、まだ「自分事」として捉えられず、なかなか勉強モードに入れない(入ろうとしない)かもしれませんが、受験、受験とそこまで追い詰める必要はありません。
今のうちから本番に備えて、心身ともに強いものにしてあげることを意識しましょう。
また2学期は、夏の暑さがまだまだ残っている時期に始まるのに、終わりの12月にはすっかり寒くなっているなど、気候の変化が激しい時期です。
勉強時間が長くなってくるにつれ、疲れも溜まってきますので、風邪などにもよく気をつけてあげましょう。
情報収集
志望校情報
2学期にも、イベント(講演会、合同学校説明会、学校説明会、文化祭など)が開催され、募集要項・パンフレットの配布なども行われています。余裕があれば学校説明会に行くなどして、得られる情報はできるだけたくさん入手するようにしましょう。一つの情報だけでなく複数を組み合わせ、判断すべきです。
まずは譲れないポイントにそぐう学校をピックアップし、学校ごとにそのポイントに関する数値や特色などを具体化するという手順を踏むと、子どもにとって良い学校であるかが、比較もしやすくわかりやすいです。
例:
Cちゃん:英語に非常に強い興味がある。将来は国際的な仕事に就きたくて、私立中高でそのための力を養いたい。
- 英語に力を入れている中学・高校を探す
X中学、Y中学、Z中学が候補に上がる。講師
- 具体的な実績などをチェック
英語のカリキュラム、ネイティブの数、英検合格者の数、海外の大学の入学者の数など。
- 比較・検討
海外大学入学者はX中が最も多いが、帰国子女数も最も多い。対して英検1級、準1級合格者やネイティブ教師の数は、Y中が突出して多かった。
しかし、説明会で質問してみると、X中の海外大進学者は実はほぼ帰国子女の実績。帰国子女ではないCちゃんは、基礎から英語を身につけようと思い、第一志望をY中に決定。
塾との連携
塾と相談をしたりする機会も、この頃から増えてくると思われます。特に夏期講習を通して見えてきたその子の弱点などについては、聞いておきたいという人が多いでしょう。この時の相談はなるべく具体的に行いましょう。
例えば、お子さんが算数でケアレスミスが多いという悩みがあったとしましょう。この時、「どうしたらケアレスミスを無くせるか」という漠然とした相談だと、「しっかり問題を読む」「しっかり計算する」という漠然とした答えが返ってきがちです。
そうではなく、答案用紙等を持参して、実際にミスしているところを示しながら質問すると、「字が汚くて写し間違えている」とか「分数の約分で間違えている」などという見解が出てきやすいでしょう。
そうなれば、「ではそれはどうしたら直せるのか」とさらに質問でき、問題解決に大きくつながっていくのです。
塾と相談する前に、何を相談すべきか(子どもが何を聞いて欲しいかも含め)子どもとしっかり打ち合わせすることも必要です。
まとめ
以上が2学期の過ごし方のポイントです。4年生では何よりも、受験勉強のベースを作ることが重要と言えるでしょう。受験勉強のベースとは、「集中力」や「継続して勉強できる習慣」であり、「なぜ」を大切にする姿勢です。こうした力を養うことが、5年生、6年生での伸び、さらには志望校合格への道につながります。夏休みで培ったものをぐんぐん伸ばしていけるように、親御さんもしっかりサポートしてあげてください。
この記事の監修者
小泉浩明 (こいずみ・ひろあき)
1956年東京生まれ。平山入試研究所所長・森上教育研究所研究員。桐朋高校・慶応大学卒業後、米国にてMBA取得。現在は「小泉国語塾」の運営、執筆、教務研究を行う。著作に「必ず出てくる国語のテーマ」(ダイヤモンド社)他。
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