やっぱり大手?それとも親身な地域塾?成績を伸ばす塾選びのポイント4つ

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現在、中学受験をする多くの子どもたちが塾に通っています。皆さんの中には、わが子をどの塾に通わせるべきか、選ぶ上でどこを重視すれば良いのか、悩んでいるという方もいらっしゃると思います。本記事ではそんな方に役立てていただけるよう、塾の種類やかかる費用などの基礎的な情報から、具体的な塾選びの着目点まで、塾にまつわるさまざまな疑問にお答えします。

|2021 麻布過去問対策/問題文の読み方夏期講習 開催! 受講生を募集開始 開催日:8/15(日)、8/29(日)|3ヶ月で伸ばす!中学受験 国語の記述アプリ|小泉浩明先生監修「KAKERU PLUS」

中学受験塾の基本情報

塾の種類

まず本記事のテーマとなる塾ですが、大きく進学塾と補習塾の2種があります。

進学塾

中学受験を志す小学生が通うのが進学塾です。名前の通り、受験に合格し、志望する中学に進学することを目指して勉強を教えます。
本記事ではこの進学塾についての解説をメインに行います。

対象となる教科は算数・国語・理科・社会。基本的には、受験に特化した、小学校の学習範囲を超えた授業を行います。
受験に関係ない音楽や体育などは指導対象外ですが、算数と国語の2教科のみ学ぶことなども可能です。このほか、英語を教えている塾もあります。
学年や塾にもよるので一概には言えませんが、基本的に週に2〜4日通う場合が多く、時間も6年生になれば、1回3時間以上となることがほとんどです。

運営規模別には、大手塾or中小塾という分け方ができます。詳しくは後述の「塾選びのポイント塾の規模」をご覧ください。
このほか、特定の教科だけを指導する「単科塾」もありますが、比較すると数は少ないです。

難関校に強い、上位・中堅校に強い、あるいは公立中高一貫校に強いなどの特色を持っている塾も多く、具体的な指導指針とともに、入塾を検討する上での大きなポイントとなるでしょう。
中には、ユニークな問題を出す学校や地元の学校に特化し、進学率がズバ抜けているなど、明確な特色を打ち出している塾もあります。

補習塾

補習塾は小学校の勉強を補うような塾です。週に通う回数や授業時間は、進学塾に比べると圧倒的に少ないです。

地域に根ざした小さな塾やボランティアなどで行われているケース、進学塾が受験希望者以外に向けて開講している場合などもあり、形はさまざまです。
また、「受験はしないが、中学校に入ったときに困らないように」というニーズに答え、先取り学習を行う塾も一部あります。

塾の必要性

受験をする小学生の塾事情

ところで、実際塾にはどれくらいの小学生が通っているのでしょうか。文部科学省の平成29年度全国学力・学習状況調査によると、東京、神奈川、千葉、埼玉の小学6年生の通塾率は以下の通りです。

東京で、塾に通っている公立小学6年生は57.9%です。このうち、「学校の勉強より進んだ内容や、難しい内容を勉強している」という選択肢2を選んだ生徒は35.1%にのぼります。また調査の対象外であった、私立・国立の小学生を加えると、さらにポイントは上がると推測できますから、非常に多くの子どもたちが塾に通っていることがわかります。

ただし、選択肢2の塾には、「公文式」や「英会話塾」なども少しは含んでいる可能性がありますので、「中学受験のため」に通っている子どもはこの数字よりは少ないと考えます。
なお、選択肢3を選んだのは補習塾に通っている子どもでしょう。選択肢4については、補習塾や進学塾などで小学校のまとめや、中学校の先取りなどの授業を受けている子どもと考えられます。

通塾のメリット

そもそもなぜこれだけ多くの受験生が塾に通うのかというと、塾はお金がかかる分、家庭学習だけでは得られないメリットを提供してくれるからです。
大きくは次の5つの面でしょう。

  • 講師

プロなので教え方が上手い、質問に答えてくれる。動機付けや学習面以外の疑問へのレスポンスも行ってくれる。

  • 教材

問題数が豊富で、問題が新しい。質も高い。

  • 勉強に専念できる環境

勉強を(強制的に)させてくれる。しっかりとした学習カリキュラムがあり、クラスが能力別に分かれている。

  • 情報

模試・過去の問題などのデータが豊富。中学校の情報が得やすく、受験のノウハウもある。

  • 塾の仲間

生徒同士での仲間意識が芽生え、頑張れる。友達のいる場に行く楽しさがあり、気分転換になる。

特に一番のポイントが、質問に答えてくれる先生がいるということです。一人での勉強だと、難問に詰まった時に、出口が見つからず時間を無駄にしてしまったり、モチベーションが下がるなどのデメリットがあります。
親が教えてあげるのも良いのですが、難易度が上がってくる5年生の後半くらいになると、プロでないと手に負えなくなってきてしまいます。

また、先生が相談に乗ってくれるという精神的バックアップも非常に魅力的です。悩みが生まれたとき、家族内での話し合いも大切ですが、第三者相手だからこそ落ち着いて頭の中を整理できるということもあります。
実は子どもだけでなく、親も助けられるパターンが多く、中にはお母さんの方が相談回数が多いといったことも珍しくありません。

教材については書店で購入できる問題集や参考書を使えばよいと思われるかもしれませんが、そうした問題集や参考書は本の大きさや価格を決めてから、その範囲に収めることを前提に問題数を決めていきます。
現実的には一冊1万円などの設定はなかなかできませんし、販売見込みも正確に立てることは難しいため、どうしても問題量が少なくなってしまいがちです。さらに限られたページの中で、それでも問題数を増やそうと思えば解説も十分には書けません。

一方塾の場合は、生徒数(本を買う人数)や、具体的にどういう問題を欲しがっているかなどのニーズがわかっているので、一定の量と質を保ったテキストや問題集を作ることができます。
そうして作られた塾の問題については、入試に似たようなものが出る場合があるという安心感も与えてくれます。これは模試も同様で、算数は特に酷似した問題が出ることが少なくないようです。

「塾友達」の存在もモチベーションを高める上で、かなり大きな影響を及ぼします。
親御さんからすると、同じ受験生同士だとライバルになってしまうのではと、少し不安に思うかもしれません。確かに真剣勝負のできる場所としての役割も、塾にはありますが、どちらかというと塾の友達は一緒に頑張る仲間として、お互いに励まし合う関係になるようです。
勉強は決して楽しいものではなく、むしろ辛く感じることの方が多いでしょう。そんな状況の中で、仲間だからこそわかる本音を言い合えることで、学校よりも塾の方が楽しいと話す子どももいます。

指導形態

ここまでは塾の必要性などについてお話してきましたが、続いては、具体的な塾の実情について解説していきましょう。
この項目では塾の指導形態である「集団指導」「個別指導」それぞれの特徴と、塾のような対面指導ではない「通信教育」について説明します。

集団指導塾

小学校の授業とほぼ同じ形式で、1人の先生が複数の生徒を前にして授業を進めます。塾の指導形態としては、最もスダンダードなタイプと言えるでしょう。
1クラスの人数については塾によって異なりますが、8人ほどの少人数なところから、25人程度のところまで、かなり幅広いです。
塾によってはテストを頻繁に実施し、結果により所属するクラスや、席次を変えるシステムをとっているところもあります。

自分以外の他の生徒がいることで、「問題に答えられないと恥ずかしい」という思いから緊張感を持って授業に臨める子もいれば、ぼんやりして先生の解説を聞き流してしまう子もいます。一度遅れが出てしまうと、すっぽり抜けたまま進んでいってしまう可能性があることにも注意しましょう。

特に「SAPIX」「日能研」「四谷大塚」「早稲田アカデミー」が、大手4大塾として有名です。「中学受験とは」でも解説しましたが、改めて下記に特色を提示します。

  • SAPIX(サピックス)

御三家をはじめとする難関校への合格実績が最も高い塾です。大量のプリントを使うため、管理などの面からも親のサポートは必須です。毎月のクラス分けテストでクラスが上下します。
授業がハイレベルな分、宿題が多くやり切れない生徒もいるほか、何をどこまでやって良いか保護者にはわからず、塾に加えて、個別指導や家庭教師に頼るケースも少なくありません。

  • 日能研

中学受験の延べ合格者が一番多い塾です。中学受験に必要な知識を満遍なく、一定のペースで進めていきます。カリキュラムテスト(カリテ)の成績により頻繁に席次が変わります。
宿題は比較的少なく、大きく落ちこぼれる子も少ないようです。しかし難関校への合格実績はサピックスに及ばず、上位・中堅に強いと言えるでしょう。

  • 四谷大塚

中学受験の延べ合格者は日能研に次ぐ二番手につけます。サピックスなどに比べると、親が教えなければいけない部分は少ないようです。提携塾が非常に多く、実績等はそれらも含むため、全国的です。
テキスト「予習シリーズ」が有名で、中小塾がこれを使って授業をしているケースも非常に多いですが、カリキュラムが変わり、難度と進行速度が大幅に上がったため、授業についていくのが難しくなったようです。

  • 早稲田アカデミー

反復学習で身に付けるタイプの子には向いている塾です。指導は熱血系で、講師と保護者の連携を密にとります。1クラスは他の大手塾に比べると少人数で、習熟度別にクラスが分かれています。
6年生向けの、9月からの志望校対策講座である「NN(何がなんでも)志望校別対策講座」は他塾の生徒も通う人気コースとして有名です。

個別指導塾

教師対生徒が、1対1、1対2、1対3~5など、少人数で個別に教えていく方式が個別指導塾です。一度に教える人数が少ないので、集団指導塾に比較して費用は高めです。

まさにその子のみに合わせた指導ですので、やる気がある子は大きく伸びます。
一方で他の人の目がないため、なあなあになってしまったり、先生の優しさに増長してしまう子もいる点には気をつけてください。

個別指導に特化した専門塾の他に、集団指導塾の塾内に併設している個別指導塾があり、集団指導塾の授業の補完的な役割を担うこともあります。
併設型の個別指導塾としては、プリバート(サピックス)、ビザビ(栄光)、個太郎塾(市進)、ユリウス(日能研)などが有名です。こうした塾の講師はほとんどが大学生のアルバイトで、質問にはきちんと返してくれますが、受験全体のプロでは無いことが多いようです。
ただし、中学受験経験者であることも多いため、年の近さもあって子どもの精神的な支えになってくれる場合もあります。

通信教育

送られてきた教材を解き、また返送すると、添削してもらえます。費用は集団指導塾・個別指導塾と比較し、かなり安価です。
Z会やベネッセの中学受験講座などが広く知られています。

最近では従来型の紙教材による添削指導に、映像(リアルタイムではなく収録)での15分ほどの解説が付属してくる形も出てきて、わかりやすさのレベルがあがってきました。
デメリットは、強制力が無いので飽き性の子は続かない点です。また、問題でわからないところがあっても、先生とは対面しませんので、すぐには聞けません。
このような点を踏まえ、塾と併用しているご家庭もあるようです。

費用感

塾には具体的にどれほどの費用がかかるのでしょう。
下の表は大手塾と個別指導、通信教育の値段を比較したものです。

塾によって期間等がさまざまですので、この項目では差がわかりやすいように、さらに時間単価で比較していきます。年間・あるいは受験全体を通した費用については、「受験にかかる費用の目安」に詳細がありますので、ご参照ください。

集団指導塾

  • サピックスの夏期講習(6年生)の例

18日間で受講料は20万4120円ですので、式に当てはめると、下記のようになります。
1日:100(分授業)×3(コマ)+30(分小テスト)×2(コマ)=360分=6時間 18日間×6時間=108時間
204,120円÷108=1890円/時間(テスト1日除く)

  • 四谷大塚の夏期講習(6年生)の例

20日間+テスト2日で、受講料は17万8000円です。同じように式に当てはめます。
20(日間)×400(分)=8000分=133.3…時間
178,000(円)÷133.3…(時間)=1335円/時間(テスト2日除く)

  • 早稲田アカデミーの夏期講習(6年生)の例

算国が24日間で1日220分、理社が20日間で1日160分。一般生の受講料は18万9400円です。
24(日間)×220(分)+20(日間)×160(分)=5280+3200=8480分=141.3…時間
189,400÷141.3…=約1340円/時間

それぞれの塾で差が出ましたが、これによって同じ大手塾・集団指導塾でも差があることがわかるかと思います。
サピックスが比較的高価な設定をしていることと、四谷大塚と早稲田アカデミーがだいたい同じ値段設定をしていることがわかりました。

個別指導

個別指導塾はほとんどの場合、コマ数で単価が設定されています。
具体的には下記の通りです。

  • 1コマあたりの単価(6年生)

プリバート(サピックス):1コマ60分5,000円
個太郎塾(市進):1コマ80分(1対2)3,825円(月4回の1回分)/総合指導料3,000円
トーマス:1コマ90分9,000円(週1回の月額が36,000円より)/入会金25,000円が目安

1時間あたりの単価は集団指導塾の2~4倍以上と、大きな差がつきます。
ですが塾側からみると、集団指導塾の1時間は単価×人数分の収入が得られますので、ビジネスとしては個別指導塾の方が、利幅が小さくなってしまうのです。
人件費を勘案すると、ある程度の価格の高さは仕方ないでしょう。

通信教育

通信教育の場合はさらにシンプルです。

  • 月額料金(1年分一括払いの場合)

ベネッセ:6,820円/月
Z会:18,048円~/月

塾と違い、価格が時間換算で設定されるわけではありませんが、月単位で比較すると非常に低価格です。また、子どもを夜外に出すこともなく安心です。しかし、通信教材のみで受験に挑むには、子どもの受験勉強に対する強い意志が必要ですから、塾や家庭教師と併用しているケースもあると思います。
※それぞれの価格は2018年7月現在のもの。

通い始めるタイミング

新小学4年生のカリキュラムは、小学3年生の2月からスタートする塾が多いと思います。この時期に合わせるか、少し遅れて春期講習や1学期からという人も含め、小学4年生(新小学4年生)で入塾するパターンが最も多いようです。もちろん、5年生や6年生から入塾する人もいます。
詳しくは前後の流れも合わせて解説している、「中学受験のスケジュール」をご覧ください。

4年生というと、受験までに約3年あるということになります。ただし、6年生の9月から算数や国語の過去問演習を始めるとしたら、6年生の8月までには算数のカリキュラムを終えておくのが理想です。そう考えると、算数を勉強できる期間は約2年半となります。
しかし、中学受験の算数を習得するには、基礎・基本だけでも、さらに算数に集中したとしても、1年はかかると思います。
もちろん、個人差もあるので一概には言えませんが、国語、理科、社会も勉強しなければならないことを考えれば、やはり4年生から通っておく方が良いでしょう。

受験勉強のスタートが遅れると、時間が足りなくなった分、かなり駆け足で詰め込まなくてはいけなくなるため負担も大きくなります。
前述のように算数は、圧倒的に時間を必要とします。おそらく塾でもかなりの時間を割くでしょう。
内容も難しいため、仮に6年生から受験勉強を始めた場合は、算数で手いっぱいで、理科と社会を勉強する時間がなくなってしまうと思われます。
国語・理科・社会にかかる時間は同じくらいですが、国語の知識は広範囲にわたるので、語彙不足などの場合は、習得するのに時間がかかると思います。

一方あまり早すぎるスタートだと、受験前に燃え尽きてしまう可能性があります。
なかなかタイミングを計るのが難しいですが、気がついたらチャンスを逃していたということにならないよう、気をつけてください。

通塾の流れ

通塾を含めた1日のタイムスケジュールをどう回すかは、家庭によってさまざまです。
参考までに、ある5年生の1週間のスケジュールを作ってみました。ご自身の場合と比較してみてください。

  • Aちゃん(小学5年生)

・週3回(月・水・金)・3時間(17:00〜20:45)+土曜日にテスト講座(14:00~16:30)のある塾に通っている
・塾の日はお母さんがお弁当を持たせてくれるので、休憩時間に食べる
・算数が苦手なので、できるだけ家庭でも勉強したい
・学校の宿題は基本的に塾の空き時間で済ませる

緑色の箇所が勉強に費やしている時間(濃い緑は塾での勉強時間、薄い緑は家庭での勉強時間)です。
塾のある日は、学校から帰ってきて少し休憩したら、すぐに塾に向かう点などから、かなりタイトなスケジュールであることがわかるかと思います。
黄色の自由時間も毎日取れているとはいえ、時間や体調・メンタルの管理には、親の支えが必要です。
スケジューリングの重要性については「中学受験のスケジュール」もご参考ください。

日曜日の19時~22時の予備の時間は、まだやるべき勉強が終わっていなかった場合などに使う時間です。もし目標分まで全て終わっていたり、子どもに疲れが溜まっているようであれば、休息の時間にしてもかまいません。
Aちゃんの場合は算数が苦手なので、ここで算数をさらに勉強するなどが考えられます。また、漢字などの語彙の勉強は毎日少しずつすると良いでしょう。

4年生のスケジュールは、この表から塾の日数(1日分)と土曜日のテスト講座が減り、自由時間が増えるでしょう。家庭学習の時間も、もっと短いかもしれません。
塾の時間は数値で表すと、4年生→5年生にかけて、1.6倍ほど増えるイメージです。

対して6年生になると、塾の日数はもう1日増え、5年生の1.3倍ほど塾の拘束時間が増えると思います。それに伴い、自由時間の半分以上が家庭学習の時間に変わるでしょう。
今は10時45分に寝ているAちゃんですが、この時間ももう少し後ろに押すことになると考えられます。

また夏期講習など休みの期間のスケジュールは、この表とは大きく異なります。
具体的には、塾では下記のような授業時間が想定されます。

  • 小学4年生

国算120(分)×16(日)=1920(分)
理社60(分)×16(日)=960(分)
合計2880分(48時間)

  • 小学5年生

国算200(分)×18(日)=3600(分)
理社120(分)×18(日)=2160(分)
合計5760分(96時間・4年の2倍)

  • 小学6年生

国算220(分)×24(日)=5280(分)
理社160(分)×20(日)=3200(分)
合計8480分(141時間20分・5年の約1.5倍)

期間が短いため、通常より増加率が上がり、4年生と6年生の比較では約3倍にも及びます。

塾選びのポイント

本当に我が子にあった塾を選ぶには、合格実績だけではなくさまざまな観点から、複数の塾を比較・検討することが重要です。
この項では、特に大きな要素である「子どもとの相性」「塾の規模」「塾のシステム」「通塾環境」の4つからチェックすべきポイントと、具体的な情報収集の手法を紹介します。

子どもとの相性

考え方

子どもと塾との相性は、最も大切な要素と言っても過言ではありません。学校に校風があるように、塾にもそれぞれの指導方針や集まってくる生徒の雰囲気などから醸成される「塾の雰囲気」があります。
周囲の影響を受けやすい子どもにとっては、学びの場が自分に合った環境であるかどうかという点は大変重要です。

例えば、熱い指導が売りの塾に、慎重な性格のBくんと、やんちゃで負けず嫌いなCくんが入塾したとします。
明るいけれど怒ると怖い先生や、積極性の高い塾のクラスメイトの中で、どうしてもBくんは萎縮してしまい、授業に身が入りづらくなってしまうかもしれません。一方、先生の叱咤激励でむしろ火が付くタイプのCくんは、どんどん勉強していける可能性があります。
このように同じ指導を受けていたとしても、塾の雰囲気と子どもの相性によって、発揮できる力や勉強へのモチベーションは大きく変わってきます。

では具体的にはどの塾がどのような雰囲気を持っているのでしょうか。
あくまでイメージですが、大手塾ではそれぞれ下記のような傾向があるように思います。

  • 各大手塾の傾向

熱血指導」の早稲田アカデミー:体育会系の子に向いている
やさしく指導」の栄光ゼミナール:内気で繊細な子に向いている
ていねい指導」の四谷大塚・日能研:のんびり屋の子に向いている
ポイント指導」のSAPIX:理解が早い大人びた子に向いている

もちろん同じ系列の塾でも、教室によって実情は異なります。次の見極めのポイントを参考に、じっくり観察してみてください。

見極めのポイント

塾の雰囲気を見極めるには、何よりもまず実際に通う予定の教室を訪れることが良いでしょう。
先生との対話では、喋り方や考え方などに、塾の雰囲気が反映されてくると思います。
体験授業では自分の子が馴染めそうな環境であるか、他の生徒の様子も観察しながら雰囲気を掴みましょう。

また塾の歴史なども参考になるかもしれません。
老舗の塾は組織的にゆったりとしている傾向がありますが、中小塾や新進気鋭の塾は実績を出したいという思いの強さからか、スパルタ式な傾向であることも多いようです。

塾の規模

考え方

塾は、手広く展開している大手塾と、地域に根ざした小規模運営塾(中小塾)の2つに大別でき、それぞれメリット・デメリットがあります。

大手塾は、長年の経験と広いネットワークがあるため、やはりさまざまな面で受験のノウハウが充実しています。教材などの質も高く、最新情報も得やすいでしょう。
また、基本的には生徒数を一定数確保できるため、能力別クラス分けがきっちりでき、その子にあった環境で学ぶことができます。

一方で、テストによる時期ごとのクラス分けや席順の変更などについては、点数のみで判断され淡々と行われますので、どこか冷たい印象を受けるかもしれません。
また、塾内で大きなスポットが当たるのは、塾の実績=営業ツールにも関わってくる上位クラスの生徒です。
そのため下位クラスは、自分から積極的に塾に相談するなどの働きかけをしないと、ただ授業を受けるだけの「お客様」になりやすいかもしれません。

比較して中小塾は、塾長先生のカラーが良くも悪くもはっきりと出ます。
そのため選択が難しく、特徴も一概には言えないのですが、先生と生徒の数が大手塾に比べ少ないため、両者の距離が近く、どこか柔らかい家庭的な雰囲気であることが多いようです。
生徒一人ひとりの成績や志望校、性格なども、先生が把握しやすいため、相談は大手塾よりしやすいでしょう。

しかしその優しい空気が、場合によっては甘やかしのようになり、子どもの気持ちが緩んで楽な方向に流れやすいというデメリットもあります。
また人数が確保できず、能力別クラス分けができなかったり、生徒にそれぞれ問題を解かせ、先生がその都度わからないところだけを解説する、集団個別のような形になってしまうこともあり得ます。

見極めのポイント

具体的には以下の箇所を、入塾説明会などでチェックしましょう。

  1. 講師:熱血指導orやさしく指導、ていねい指導orポイント指導、プロorバイト
  2. 教材:難易度(応用問題までいくのか?)
  3. カリキュラム:速いor遅い
  4. 生徒:レベル、真剣味
  5. 規模:大手塾or中小塾
  6. 実績:合格率、志望校の合格率

これらのポイントによって、塾全体の特徴とその教室固有の特徴が同時にわかると思います。
特に先生については重要です。良い先生と一口に言っても、丁寧に時間をかけて演習をする先生もいれば、ポイントだけをビシッと言って生徒の自主性に任せる先生もいます。わが子に合っているかが大事です。

また志望校の合格率をチェックする際、大手塾の場合は全体の合格率だけでなく、その校舎での合格率も見ましょう。

塾のシステム

考え方

入塾候補となる塾がいくつか思い浮かんだら、それぞれの塾の具体的な指導体制を確認しましょう。これは、子どもだけでなく、親にも大きく関係のある項目です。
例えば授業の終了時刻や通塾日数は、子どもの体力が持つかどうかという点だけでなく、「(迎えに行く場合)迎えに行ける時間か」など、親が行うべき実務的な点からも考えないと、入塾したはいいものの、タイムスケジュールを上手く回せないという事態に陥ってしまいます。
特に共働きの家庭では、(お弁当を作る場合は)お弁当の準備が負担となる場合が多くあります。学年が低いうちは早く帰れる塾でも、6年生にもなるとお弁当はほぼ必須となりますので、注意しましょう。

カリキュラムについては、進度や教材の難易度が合っているかがポイントです。難しすぎると授業についていけなくなってしまいますし、簡単すぎると退屈してしまいます。
注意すべきは、本格的な受験に達する部分(おおよそ5年生の半ばごろ)を過ぎると徐々に難しくなってくる点です。
見通しを立てず最初の様子だけを見て、我が子はできる子だと早合点してしまい、いざ6年生になってから、「この塾は合っていなかった」と気がつくこともあります。
加えて、そういった勉強に関する悩みが出てきたときに、相談しやすい先生や環境であるか−−いわば親と塾(先生)の相性もチェックしましょう。

また塾と志望校との関係性も見逃せません。自分の子供が行きたい学校に強みがある(安定して合格実績を出している)塾であれば、サポート力も強いでしょう。
大手塾の場合は、下記の通り、それぞれ得意とするゾーンがあります。

  • 各大手塾の得意ゾーン

SAPIX:難関校(御三家に強い)
早稲田アカデミー:難関校(早稲田附属に強い)
四谷大塚、日能研:上位~難関校
栄光ゼミナール、市進学院:中堅校~上位校

見極めのポイント

通塾日数や時間などはパンフレットや入塾説明会などで、明確に提示されるでしょう。同様にカリキュラムについても説明があるでしょうが、我が子のケースと照らし合わせるためには、直接塾の先生に質問するのが良いです。

「うちの子はついていけるか」など漠然としたものではなく、授業の速さ・宿題の量・困った時の対処などポイントを絞った質問をする方が、先生も答えやすいと思います。この時、平均的なものとの比較や、なぜその塾がそうしているかの意図まで聞きましょう。

例えば授業の速さについては、中学受験の中心となる算数の全カリキュラムがいつ終わるかなどの質問などが考えられます。
6年生の夏前に終わるケースが多いですが、6年生になる前など早く終わらせている塾もあります。その理由である「演習により多くの時間を取るため」といったところまで聞けば、「自分の子は算数が得意だから、ある程度スピードがあってもついていける。演習を積んだほうが力になるだろう」など、我が子の場合に即しての判断がしやすいと思います。

困ったときの対処については、わからない問題が出た時に質問ができるか、分野や単元がわからなくなった時はどうするかなどを聞くと良いでしょう。
子どもによっては、わからないと思ったとき、挙手してすぐに疑問を解消できる方が良いという子もいれば、授業が終わった後に個別で聞く方が、気後れせずに良いという子もいます。

通塾環境

考え方

塾を選ぶときは、授業内容や先生のキャラクターと同じくらい、自宅との距離などの通塾環境を重視しましょう。
どんなに授業がわかりやすいと評判の良い塾でも、自宅から1〜2時間もかけて長期間通うようでは、時間がもったいないですし、疲れが溜まって体調を崩しかねません。
また夜遅くなることも多いため、安全の観点から立地についても入念に検討してください。

見極めのポイント

距離的には、ドアトゥードアで30分以内であれば、子どもに負担もかからず理想です。
合わせて、通塾路の交通量、人通り、明るさも確認しましょう。特に昼夜の差には注意してください。
塾は基本的には夜に行くことが多いです。「下見に行ったときに落ち着いた雰囲気の場所だと思ったのは、実は昼間に店を開けていないだけの飲み屋街の中にあったから」などということもあり得ます。

また塾が雑居ビル内、特に高い階にあった場合、他のテナント客とのエレベーター内の接触には、防犯面から怖いものがあります。
大手塾はその点も踏まえ、駅前や治安の良い場所を選ぶなど、立地にこだわることが多いようです。

情報収集

塾の情報を集めるための手法としては、下記の5点が主なところでしょう。

  • 体験授業

実際に塾での授業を体験(親は見学)できます。実情を知るには一番良いでしょう。

  • 入塾説明会

学校説明会のように、塾の概要を説明してもらえます。校舎の雰囲気や校舎の設備などもわかります。

  • 資料請求

電話やウェブなどで申し込み、塾のパンフレットなどを送ってもらえます。細かい金額や実績などが具体的にわかりますので、ぜひやっておきたいところです。

  • ウェブ

情報収集にかかる、時間と手間が大幅に省けます。概要のほか、実際に通っている(いた)人の生の声も聞けますが、真偽は定かではありません。

  • 地域での評判

口コミや噂になっている情報のほか、先輩ママの実体験などは大いに参考になるでしょう。ただ、噂などは信頼性に疑問があります。

いずれかのみで判断するよりは、いくつかの手法を組み合わせることが望ましいです。また複数の塾の情報を集め、それぞれ比較して検討すると良いでしょう。

入塾後のサポート

勉強状況の管理

入塾後は、プリント・テキスト・模試の結果などたくさんの資料を管理しなくてはいけません。とても子ども一人で収拾がつけられるレベルではないでしょう。
例えばSAPIXでは、テキスト(プリント)だけで本棚が1つ必要になるほどの量にもなります。

宿題の管理はもちろんですが、模試や過去問演習についても問題文・解答解説・データ・答案をまとめてファイリングしましょう。見直しや弱点分析の時に必要となります。
さらに、そのファイリングした模試や過去問の結果をデータ化すると、成績の推移などを数値として客観的に評価できるので、志望校選定に非常に役立ちます。これも子どもには難しいので、親がやってあげることが望ましいです。

また、日々の家庭での勉強の状況を見てあげることも大切です。
以前は勉強をする場といったら子ども部屋というケースが多かったのですが、最近はリビングで勉強させているという家庭が増えてきました。小さい兄弟などに邪魔されなければ、親の目も届きますし、開放感もあって良いでしょう。
長時間の学習(例えば、6年生で休みの日に8時間勉強するなど)はどうしても飽きてしまいます。効率を低下させないためには、朝はリビング→昼間は塾の自習室→夜は子ども部屋といったように、勉強する場所を変えることも、おすすめです。煮詰まってきたら、科目を変えるのも気分転換になります。

学校や遊びとの両立

塾に通い始めると、当然1日のタイムスケジュールは今までと変わってきます。
特に塾同様、決められた曜日の決められた時間に通う習い事は、塾のコマ数が増え、難易度も増してくる5年生ごろに、継続か中止かの決断を迫られるでしょう。
本人や親の続けたいという気持ちが強い場合も往々にしてあるでしょうが、どちらも中途半端になるような事態は避けたいところです。

ゲームやテレビなどの遊びについては、通塾していても4年生では比較的自由です。5年生になると、「この番組だけは!」などある程度の時間管理が必要になってきます。
そして最も忙しい6年生では、遊びのためだけの時間を毎日作ることは難しく、現実的には、息抜きの一部程度となるでしょう。
それでも隙間の時間は、ある程度「確実に」作ってあげることが大切です。ぎゅうぎゅうに詰め込むと、返って能率が悪くなってしまいます。

また学校の宿題との両立も、6年生にとっては悩みどころです。
さらに、インフルエンザなどの感染症対策なども兼ね、6年生の後半になると子どもを休ませがちにする家庭もあります。それぞれの判断があるかとは思いますが、宿題・課題の提出状況や欠席状況は内申書(調査書)が必要な国立や公立一貫校の場合はマイナスに響くこともありますので、注意しましょう。

まとめ

以上が中学受験の塾の基礎情報とチェックポイントです。塾の環境が自分にあっているか否かで、子どもの成績の伸びやモチベーションは大きく異なってきます。漠然としたイメージや噂に惑わされず、事前に情報をたくさん集め、我が子にぴったりの塾を選びましょう。

3ヶ月で伸ばす!中学受験 国語の記述アプリ|小泉浩明先生監修「KAKERU PLUS」

この記事の監修者

小泉浩明 (こいずみ・ひろあき)

1956年東京生まれ。平山入試研究所所長・森上教育研究所研究員。桐朋高校・慶応大学卒業後、米国にてMBA取得。現在は「小泉国語塾」の運営、執筆、教務研究を行う。著作に「必ず出てくる国語のテーマ」(ダイヤモンド社)他。

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