中学受験とは<現状・費用・勉強法>これ1本で分かる中学受験の基本
この記事では「中学受験とは」と題して、「そもそも中学受験とはどういうものなのか」から始まり、「どんな準備が必要なのか」「どんなメリットがあるのか」など、みなさんが疑問に思われているであろう中学受験の基本の部分を解説しています。
「受験をするべきか考え中」という中学受験初心者の方にも、「受験勉強に行き詰まっている」という中学受験真っ只中の方にも、お役に立てていただけるよう、さまざまな観点から重要ポイントをまとめました。参考にしていただけると幸いです。
中学受験の基本
受験の現状
受験生
中学受験は根強い人気があり、毎年多くの小学6年生たちがそれぞれの志望校に挑みます。具体的には、どれほどの数になるのでしょうか。
文部科学省の学校基本調査によると、中学1年生は全国に約109万人おり、そのうち受験が必要な私立・国立中学に在籍しているのは約9万人。つまり、少なくとも全体の約8%の子は、中学受験をしていると考えられます。
少なくともというのは、この数字が(「受験」ではなく「受検」です。詳しくは公立中高一貫校の項をご参照ください)をして、公立中高一貫校に進学した子や、受験に落ちて公立校に行った子の数をカウントしていないため、実際に中学受験を「した」人数はさらに多いと考えられるためです。
意外に高い割合だと、驚かれた方もいるのではないでしょうか。実は中学受験にはかなりの地域差があります。地方ではそもそも私立校の数が少なく、公立校に進学することが一般的ですが、首都圏では選択肢が多いこともあり、中学受験で可能性を広げようとする家庭が多いのです。
例えば東京都文京区では、都内へ進学した1263人の小学校卒業者のうち、約43%に当たる547人が国立・都立・私立中学へ進学しています。(出典:東京都教育委員会 平成29年度公立学校統計調査報告書)
学校
一方、受験を実施する側の学校はどうでしょうか。全国に私立中学は775校、国立中学は71校あります。ちなみに公立中学は9479校です。(出典:文部科学省 学校基本調査)
受験ときくと、限られた入学枠を得るために競いあうというイメージがありますが、人気のある学校で高倍率が続く一方で、定員割れに苦しむ学校もあるのが現状です。
こうした人気の二極化傾向は、少子化の進行に伴ってますます激しくなると予想されます。そのため各学校は自校の魅力を打ち出すべく、さまざまな特色ある取り組みを行っているのです。
中学の種類
私立中学や国立中学という概念は知っていても、運営法人の違いが実際の学校生活にどのような違いをもたらすのか、いまいちわからないという方もいらっしゃるかと思います。
中学校の種類は、大きく下記の4つに分けることができ、それぞれ異なった魅力があります。それぞれの試験についての詳細は、後述の試験形式をどうぞ。
私立中学
中学受験の中心となるのは、何と言っても私立中学です。授業料や入学金等が必要ですが、お金がかかる分、手厚い教育的支援を備えていたり、留学のチャンスが得やすい環境や、学習設備が整っているなど、各校ごとにそれに見合ったメリットを多く用意しています。
「私立中学」という括りで十把一絡げに判断するのではなく、自分の欲しいメリットがある学校を選びましょう。
共学校だけでなく、男子校や女子校、宗教系の学校、大学付属校など選択肢も豊富です。
また、私立の中高一貫の教育体制は、高校受験によるカリキュラムの中断がないため、余裕を持って大学受験に備えることができます。
大学付属校ならば、さらに大学までのロードマップがしっかり示されていると言えるでしょう。中学・高校だけでなく、さらに先の将来までを見据えて、小学生から準備をする人も多くいます。
試験は各学校が独自に作ります。「理数系が難しい学校」「記述が多く、考えをまとめる力があるかを見る学校」など、学校がどんな生徒を取りたいかという狙いと、問題の内容・形式がリンクしているところもあります。
その試験をパスし、学費などの諸条件に納得した上で入学するので、似たようなレベル・価値観の子が多いようです。
国立中学
国立中学はその名の通り、国立大学法人が運営する中学校です。進学実績の高さが特長ですが、公立と同じように、中学3年間の授業料は無償で、高校に進んだ場合も私立と比較するとかなり安価です。そのコストパフォーマンスの良さから、非常に多くの受験者が集まります。
ただし、私立や次に紹介する公立中高一貫校と異なり、かなりの人数が高校に内部進学できない学校もあるため、注意が必要です。例えば、東京学芸大学附属中の附属高校への進学率は約30%~50%のようです。
中学受験のメリットの1つである「高校受験に時間を割かれない」という点が機能しない可能性もあることは、事前に押さえておきましょう。
また、国立中学は志願者が多い場合、試験だけでなく抽選が行われる可能性があります。例えば筑波大学附属駒場中では、募集人員に対する志願者が約8倍になった場合に1次選抜として抽選が行われ、当選した人しか試験を受けられません。つまり、勉強だけでなく運も絡んでくるのです。
しかし、これらの要素を以ってしても、なお圧倒的な人気を誇るという点で、国立中学のポテンシャルはわかっていただけると思います。
公立中高一貫校
「公立校でも6年間切れ目のない教育を」という考えの下、将来のリーダーを育成するために設立されました。その名の通り、公立校ですが私立のように中高一貫教育の形をとっています。
入学者選抜が行われますが、国立同様に中学の授業料は無償・高校も安価です。
公立中高一貫校が始まったのは、1999年と比較的歴史は浅いですが、進学実績を伸ばしているところも多く、特に東京都ではいずれの学校も4〜6倍前後の高倍率が続いています。
各学校の個性的なカリキュラムで学べる点や、地頭が良く、多様な個性を持つ子たちが集まる環境が評価されているようです。
入学者選抜試験は、「受験」ではなく「受検」と表記します。これは、選抜として行うのが試験ではなく、適性検査であるためです。合格判定は、小学校からの報告書とこの適性検査(作文を含む)の合計点で行います。
適性検査の内容は、小学校の学習範囲ではあるものの、複数教科が混ざった科目横断的なものです。
知識が必要な私国立と入試問題の出題傾向は異なりますが、私立上位校受験者の併願校として位置付けられる場合もあります。
公立中学
各地域に設置されている、市町村などが運営する学校です。授業料は無償で、受験の必要もありません。小学生のうちに目一杯遊ぶこともできます。通学にかかる負担もほとんどありません。地元の友達も多くが同じ中学に進学するため、地域との関係性が途切れにくい点も特徴です。
また似たような家庭状況や考えの人が集まる私立に対し、公立中学はさまざまなバックボーンを持った子どもたちで構成されています。思春期の多感な時期に多様な価値観に触れられるという点は、公立の大きな魅力でしょう。これはけっして座学では得られない学びです。
一方で、授業内外に亘る手厚い学習指導という面では、どうしても私立には劣ってしまう場合があります。また多様な人がいるからこそ、いじめの可能性が高まるのではないかなどと、危惧する親も多いようです。
入試のレベル
では実際の入試のレベルは、どれほどのもので、どれだけの学力があればチャレンジできるものなのでしょうか。
もちろん受験する学校によってかなりの差がありますが、どこの学校でも小学校のテストで100点を連発しているからといって、合格できるとは言えません。
中学受験では、小学校で学ぶ範囲を大きく超えた出題がなされます。中には、高校入試や大学入試と見紛うものもあるほどです。
例えば算数では、学校では習わないニュートン算、フィボナッチ数列 、面積図などを知らないと「解けない」、あるいは「解きにくい」問題が出題されています。
国語の問題文の説明的文章では、大人を対象とした新書からの出題が多く、物語文でもいわゆる児童文学ではないものが目立ちます。
理科、社会では一部の附属中学は、大学受験生ですら苦戦しそうな超難問を出題します。
そう、中学受験は経験したことのない人には想像するのも難しいような、大きな壁なのです。しかし、この壁は天才しか乗り越えられないものではありません。
勉強をはじめとした事前からの備えをきちんとしておけば、十分対応できます。だからこそ多くの小学生がチャレンジしているのです。
受験をすべきか
受験をする意義
まず、日常的にはなかなか得づらい、大きな挑戦の機会を得られるということが大きいでしょう。目標のために努力し、受験の緊張感や、学ぶことの苦しさ、楽しさを経験することで、精神的な自立が期待できます。
積み重ねてきたものが結果に結びつくという体験は、主体性や忍耐力を養うものです。
仮に不合格だったとしても、失敗とその辛さを乗り越えるという経験は、未来のある子どもにとって大きな糧になります。
このように中学受験は、単純に「学びのチャンスを広げる」「進路図を描きやすくする」といった点だけでなく、我が子の成長という観点からも、意義を見出せるのではないでしょうか。
公立校と比べたメリット
公立中学(公立中高一貫校除く)と比較した場合の、私国立のメリットは大きく下記の3点です。
- 中高一貫なのでカリキュラム的に無駄が少なく、大学受験に有利
- 同じようなレベル・価値観の子たちと切磋琢磨できる
- ユニークな先生、授業、カリキュラムが揃っている場合が多い
男子校、女子校、共学校、宗教系の学校…など、特徴や校風を考慮して自分にあった学校を選ぶことができるのも、受験をする子の特権です。例えば、男子校・女子校は、異性を気にしなくて良いため、のびのびと過ごせます。
「小学校でいじめにあい、そのまま同じ中学に行きたくない」というケースや、「地元の中学が荒れていると聞いて不安」というケースも、受験をすれば我が子を取り巻く環境を再構築することができます。
私国立=いじめはゼロ、とは言えませんが、受験によってその子が馴染みやすい環境を用意することで、リスクを回避したいと考える人も多いようです。
公立校と比べたデメリット
一方、公立中学と比較したデメリットは、大きく下記の2点です。
- 教育費は高くなる
- 多様な価値観に出会いにくい
それぞれ「お金をかけた分、結果が返ってくる」「価値観が近い子たちと学校生活を過ごせる」というメリットと表裏一体にあるので、どちらの要素を評価するかで、見方も変わってきます。
また男女共学の場合はそれぞれの性別の本質を理解できますが、男子校(女子校)の生徒は異性に対して、早熟か奥手の両極端になりやすい傾向があるかもしれません。
受験に向いている子
受験に挑む小学6年生の時点では、発達の段階はまだかなり個人差があります。基本的には、早熟で大人びている子が有利です。
また、まじめな子(親の言うことを聞く子)、地頭が良い子、学校の勉強を苦労せずこなせる子、コツコツ努力できる子が向いていると言えるでしょう。
自分がなぜ受験勉強をするかの目的(自分にどんなメリットがあるか)が、しっかりわかっていることが重要です。
受験に向いていない子
一方で、精神年齢が未熟な子、学校の勉強に苦労している子、人の話を聞かない子は不向きと言えます。
親に言われたからという「やらされている感」を持ってする受験勉強は、良い結果に結びつきにくく、親子共に強いストレスになります。
今は幼い子でも、高校受験の頃には精神的にも成長していますので、焦って中学受験に挑むよりも、3年後に向け着実に勉強の習慣をつけていくというのも一つの手です。
中学受験のスケジュール
上記のポイントを見て、中学受験をしようと考えたら、まずは塾などの学習手段と目標校をいくつか決めましょう。
中学受験は4年生からのスタートが一般的と言われていますが、もっと低学年からスタートする人もいれば、5年生や6年生から始める人もいます。
下記の図は一般的なケースの大まかな流れです。さらに詳細なスケジュールについては、「中学受験のスケジュール」をご覧ください。
学習スケジュール
全体のスケジュールを考える上で、学習スケジュールは最も大きな要素です。
塾では、カリキュラムに沿って学習します。分野・単元の理解→演習→定着→新しい分野・単元の理解…のサイクルです。算数は6年生になる前に一通りカリキュラムを終了させている塾もあり、理科・社会も6年生の後半には範囲の学習は終わります。
6年生の1学期は新分野・単元の習得や既習分野・単元の演習をしながら自分の苦手の克服を目指し、夏休みにかけて次第により入試に近い形の演習(例えば、算数では既習単元の問題がバラバラに出題される「ランダム演習」)に入ります。
さらに実際に出題された入試問題などの応用問題も手掛けます。
2学期に入ると、志望校別の対策講座が始まることが多く、通塾日数が増えることもあります。
志望校の過去問演習を始めるのもこの時期で、最初は驚くほど点数が取れないと思います。おそらくは、3割程度しか得点できない場合が多いでしょう。
しかし慣れも含めてだんだん点数が上昇してくるので、根気よく挑みましょう。
志望校の傾向や頻出単元への重点的な対策も必要です。例えば上位校の算数では、「数の性質」「規則性」「立体図形」などの単元からの難問が多くありますが、それらがだんだん解けてくるにしたがって、受験者平均、そして合格者平均に近づいていきます。
そして、各科目の合計がその年の合格者最低点を何度も超えるようになると、かなり合格の可能性が高まります。
過去問はその学校が作った純度100%のものですので、似せるように意識して他の人が作った模擬試験よりも、信憑性が高い場合が多いです。
国語に関しては6年生からかなり問題文が難しくなりますが、これも慣れによってだんだん読めるようになります。
理科・社会は6年生の夏休みくらいまでは、知識を培い、問題演習を通じて各分野を深く理解していくという流れです。2学期半ばからは過去問演習で志望校の出題傾向に慣れるとともに、表や資料、記述や作図問題も解けるように演習して行きます。社会は時事問題にも力を入れるべきでしょう。
また、定期的に模試を受け、自身の学力やポジションを確認することも大切です。
学校選び・試験当日~発表後のスケジュール
6年生になると、模試や通塾日数の増加で忙しくなるので、できれば4、5年生のうちに学校説明会や文化祭・体育祭に参加し、学校の生の情報に触れておくのが良いでしょう。
もちろんネットや書籍の情報も参考になりますが、百聞は一見に如かずです。
志望校は、早い時期からあるに越したことはありませんが、6年生の2学期には、併願校を含めて具体的な受験校を決めておきましょう。この時、大いに参考になるのが模擬試験や過去問の点数です。
なお、保護者は志望度の高い学校だけでなく、受験する可能性のある学校の説明会には全て参加しておいた方が良いでしょう。試験の新傾向など、重要な情報が入手できるかもしれません。
そして3学期には、いよいよ試験が始まります。首都圏の試験の中心となるのは、東京都と神奈川県の私立中学入試が本格的にスタートする2月1日です。そこを起点に各校は試験を実施し、5、6日あたりで終了します。
一方、同じ首都圏でも、千葉・茨城・埼玉の試験は、1月前半から始まります。
地元の人はもちろんですが、東京・神奈川の人も本番に向け感覚をつかむための、いわゆる「お試し受験」として受験することが多いため、2月がピークとはいっても、試験シーズンの実質的なスタートは1月であるといえます。ここで合格をとって勢いをつけるのがポイントです。
しかし、まさかの不合格となると、自信を失い、精神的に立ち直る前に、本番の試験が終わっていた、などということもあり得るので、注意しましょう。
上記の試験スケジュールから逆算すると、勉強に全力投球できるのは年末までです。
年が明けるまでは、寝るのが遅くなってもある程度仕方がないかもしれません。
しかし年が明けたら体調管理のためにも、生活のサイクルを朝型に直しましょう。特に、受験前日は早目に寝て、スッキリした頭で臨むことが大切です。
受験当日は、大雪や交通網の乱れも可能性があるという覚悟もして、早め早めの行動を心がけましょう。
また、1月2月は寒いので、服装にも注意が必要です。試験教室は、同じ室内でも寒いところと暑いところがある可能性があるので、カーディガンなど脱ぎ着をして体温調整が可能な服装にしましょう。
普段はできていても、本番には弱いという子もいるので、極端にあがらないためのメンタルトレーニングを、試験日までに行っておくのも良いでしょう。
その一つの手段が「お試し受験」ですが、合格をとると、逆に安心しきって気が緩む子もいるので、このあたりは子どもの性格を考えて戦略を練る必要があります。
試験後は合否がわかった段階で、入学手続きをするのかしないのか、また次はどこを受けるかをすぐさま判断しなくてはいけません。
場合によっては同じ日に違う学校を受験できるようにしておき、すでに受験した学校の合否によってチャレンジ校に切り替えたり、あるいは滑り止めを確保するといったことを決断しなければならないこともあります。
いずれにせよ短時間で決めなければならないので、あらかじめシミュレーションしておき、本番で慌てないようにしたいところです。
ここに行くと決めた学校に合格したら手続きを確実に行い、ここで中学入試は終了です。もちろん、進学先は決まったが、その後に控えていた受験料を払った残りの学校も受験するという生徒もいます。
第一志望に合格した生徒、第2、第3志望に合格した生徒、まさかの全敗の生徒など、試験の結果は悲喜こもごもでありましょうが、いずれにしても中学受験終了のセレモニーとして、本人はもちろん保護者の労をねぎらう「祝賀会」「お疲れ様会」を家族で行うことをお勧めします。
長い期間に及んだ中学受験を振り返り、反省や次なる目標を話し合いましょう。
どんな結果でも、4月には皆等しく新しい環境で中学校生活をスタートさせるのです。次のステップに優越感や敗北感を強く引きずるようなことは避けたいものです。
受験への備え
中学受験に挑むには、さまざまな準備が必要です。金銭的な備え、学習的な備え、情報的な備えに加え、子どものサポート方法もご紹介します。
必要な費用
受験前にかかる費用
受験前にかかる費用で最も大きいのは通塾にかかる費用です。月々の授業料だけでなくテキスト代や、夏期講習などにもお金がかかってくるため、受験する家庭としない家庭では、教育費に大きな差が出ます。
授業時間や模試の頻度は学年が進むごとに増えるので、塾にかかる費用も比例して上昇します。前年と比べ20~50万円ほど増えていくケースが多いでしょう。
年間を通すと、大手塾の場合なら、「4年生で45万円前後、5年生で70万円前後、6年生で110万円前後」が目安になるかと思います。
もちろん塾や地域によって費用は異なりますので、資料請求や塾説明会などで、しっかり確認しましょう。
また受験そのものにかかる費用も考える必要があります。多くの学校は受験料を2~3万円ほどに設定していますが、5校受ければ10〜15万円が必要になりますので、決して安い額とは言えません。このほか、通塾や受験当日にかかる交通費、などの諸費も見過ごせません。後述の合格後にかかる費用も踏まえ、受験前に長期的なマネープランを立てるべきです。
合格後にかかる費用
文科省が発表した平成28年度子供の学習費調査によりますと、私立中学に通う家庭の平均的な学校教育費は、年間99万7435円という結果が出ています。うち、学校への納付金等は26万1545円です。(入学金を含む)
こちらもあくまで平均値ですので、学校によってこの数字より高い場合や低い場合があるかと思いますが、公立中学の平均13万3640円と比較すると、その差は非常に大きいことがわかります。
単純に、この数字を中1でかかる費用とし、中2〜高3 でかかる費用は合計額から入学金を引いた73万5890円として計算し、さらに高校の入学金を20万円と仮定して含めると、6年間でトータル約490万円の負担となります。
またこの額は、塾などにかかる費用を勘案していませんので、さらなる出費も予想されます。
各学校もかかる費用を公開していますので、具体的な例については下記をご参照ください。
- 武蔵中学校
入学金 37万円
入学後の納付金(授業料、維持費など) 85万2200円
その他費用 6万5000円
合計 128万7200円
- 吉祥女子中学校
入学手続納入金 42万5000円
学費(年額) 56万7000円
その他費用(教材費、保護者会費など)14万6800円
指定服(制服、体操着など) 10万4569円
合計 124万3369円
- サレジオ学院中学校
入学金 25万
校納金(授業料、施設整備費など) 71万4000円
その他、生徒会費や各行事参加費などが必要。
合計 96万4000円以上
※2019年10月現在
必要な勉強量
勉強時間
個人差があるため、平均時間や量を見出すことはなかなか難しいです。ただ上位校を狙っている6年生の生徒はテレビやゲーム、マンガは見ない・しないという子も多くいます。
そこまではできないという家庭でも、塾に通って宿題をこなすだけではなく、予習復習や、苦手分野の克服のための勉強をしようという自発的な姿勢が大切です。
また同じ勉強時間でも、簡単な問題を解いていた子と難しい応用問題に当たっていた子では、得るものが違います。時間や量だけではなく、質の部分にもこだわるべきです。
家庭学習の必要性
予習と復習はもちろんですが、苦手科目や単元の克服のための勉強は、家庭学習で繰り返しましょう。塾の授業はどんどん進んで行ってしまうので、苦手分野でつまずいているうちに、他の分野にも乗り遅れてしまった、という事態を防げます。
模試も、塾では個々の生徒の間違いを直して指導することはできませんので、「受けたら受けっぱなし」にはせず、家庭で復習を行うとより学びが身につきます。
家庭学習はどうしても集中力が続かなくなってしまいがちですが、息抜きを兼ねて、計算練習や漢字の練習などの基礎的な学習や、社会時事問題集、子ども新聞を読んで見るのも良いでしょう。
また、高学年になると本を読む時間が取れなくなってしまうため、低学年~中学年のうちに読書習慣を身につけておくと、後に読解力となって返ってくるのでオススメです。
塾
塾の種類
中学受験のための塾は大きく分けて、集団指導の大手塾、中小塾・個別指導塾・家庭教師・通信教育があります。さらに詳しい塾の選び方は、「塾選びのポイント」記事をご覧ください。
<大手塾>
多くの校舎を持ち、大手ならではの経験豊富な講師陣やテキスト、情報量が強みです。一方で、我がことのように親身になってくれる地元塾と比べると、対応が業務的になりがちなケースもあります。
特に下記の塾が4大塾として有名です。
- SAPIX(サピックス)
御三家をはじめとする難関校への合格実績が最も高い塾です。大量のプリントを使うため、管理などの面からも親のサポートは必須です。毎月のクラス分けテストでクラスが上下します。
授業がハイレベルな分、宿題が多くやり切れない生徒もいるほか、何をどこまでやって良いか保護者にはわからず、塾に加えて、個別指導や家庭教師に頼るケースも少なくありません。
- 日能研
中学受験の延べ合格者が一番多い塾です。中学受験に必要な知識を満遍なく、一定のペースで進めていきます。カリキュラムテスト(カリテ)の成績により頻繁に席次が変わります。
宿題は比較的少なく、大きく落ちこぼれる子も少ないようです。しかし難関校への合格実績はサピックスに及ばず、上位・中堅に強いと言えるでしょう。
- 四谷大塚
中学受験の延べ合格者は日能研に次ぐ二番手につけます。サピックスなどに比べると、親が教えなければいけない部分は少ないようです。提携塾が非常に多く、実績等はそれらも含むため、全国的です。
テキスト「予習シリーズ」が有名で、中小塾がこれを使って授業をしているケースも非常に多いですが、カリキュラムが変わり、難度と進行速度が大幅に上がったため、授業についていくのが難しくなったようです。
- 早稲田アカデミー
反復学習で身に付けるタイプの子には向いている塾です。指導は熱血系で、講師と保護者の連携を密にとります。1クラスは他の大手塾に比べると少人数で、習熟度別にクラスが別れています。
6年生向けの、9月からの志望校対策講座である「NN(何がなんでも)志望校別対策講座」は他塾の生徒も通う人気コースとして有名です。
<中小塾>
一定の地域で複数展開をする準大手塾や、さらに狭い範囲に数校を持つ地元塾、大手塾をやめた塾長が開いた小さな塾など、大手塾以外にも地域にはさまざまな塾があります。
大手よりも塾と生徒の距離が近く、相談しやすいことも多いですが、一方で塾長のクセが強くて馴染めず、辛い場合もあります。地元の口コミなどを参考にしましょう。
<個別指導>
完全個別、少人数個別の二種類があります。人数が少ないので、子どもが講師へ質問しやすかったり、講師が一人ひとりの進度をしっかりと確認してくれることがメリットです。
生徒に合わせた指導ですから、授業についていけないということはありませんが、費用は割高になります。また、授業における緊張感が不足してしまう場合もあります。
<家庭教師>
プロの家庭教師を斡旋してくれる業者や、個人契約を通し、講師が自宅にきて指導してもらえます。
中には経験が浅いアルバイトの学生もいますが、受験を経験していた場合ですと、年の近さなどもあって子どもと打ち解けやすいということもあります。
集団授業の塾と併用する人も多いです。
<通信教育>
通信教材を使って自主学習し、また通信添削で指導を受けるものです。Z会や進研ゼミなどが有名です。
自分のペースででき、費用も比較的安価ですが、すぐ質問できる環境や、対面で見てくれている指導者がいないため、子どもの自主性が大いに求められます。
塾選びのポイント
まずは、志望校や家庭の考え方と塾のシステムがマッチしているかという点を念頭において、塾選びをはじめましょう。
たとえば四谷大塚や日能研は6年生で週4日。2学期になると、さらに日曜日の「志望校別の対策講座」が加わります。塾内で完結している――つまり家庭などで教える部分は少ないというメリットがありますが、通塾日数が多いと、疲れやすい子などには、大きな負担になります。
逆にサピックスは6年生の前半は週3日(後半はサンデーサピックスが始まり週4日)です。しかし宿題が多いため、親が教えたり個別指導や家庭教師が必要な場合が少なくありません。
親が多忙な場合は、対応が難しくなってしまいます。※通塾日数には週テスト・オプション講座等を含みます
塾のカラーだけでなく通塾時間や立地も検討ポイントです。できるだけ通うのが楽で、治安的にも安心な場所を考えてあげましょう。
また、子どもの性格とその校舎の校長や担任の相性も大切です。入塾したはいいものの、子どもが気後れしてしまい、先生になかなか質問できなかったという事態を防ぐには、まず体験授業などを受けてみるのが良いでしょう。
加えて、大手塾の場合は「塾の合格実績」だけでなく「その校舎の実績」も確認しましょう。全体では300人も合格していたのに、A校舎からはわずか1人しか合格できていなかったということもあり得ます。
塾の活用法
塾をうまく使うには、「講座を真剣に受けて、3ヶ月後までに◯点あげる」など、短期の目標を立てることが有効です。
しかし、成績が動くには通常3か月くらいかかるので、焦りは禁物です。逆に3か月以上たっても動かなければ、塾への相談など積極的な行動に出るべきです。転塾も検討課題にあげても良いでしょう。
ただし、転塾は大きなリスクもあります。カリキュラムが違う場合は、学習していない分野・単元がでてきてしまい、場合によっては自分でそれらを埋めなければなりません。
また一緒にお弁当を食べたり励ましあったりする塾での友達関係を、一から作らなければならないのも負担になります。子どもと話し合って、よく考えましょう。
志望校の情報収集
学校の情報を集めることも大切です。合格発表当日は、我が子の進路を決めるという一大決心を、その場で迅速にしなければいけないといった場面におかれることもあります。
情報の取捨選択はどう行うのか、どういった点に着目すべきかなど、ポイントを押さえておきましょう。
進学実績・指導体制
情報としては「東大に何人合格した」ということも重要ですが、現役・浪人の違い、医学部進学の人数、理系文系の人数など、子どもの希望に沿っているかをチェックしましょう。
例えば、「日本育ちだが英語が大好きで、英語を重視したい」という子であれば、英語の授業時間やネイティブの教師の有無、英検などの合格者数も判断材料になります。
海外の大学の合格者も調べたいところですが、元から英語がペラペラな帰国子女の実績であるかもしれない点には注意しましょう。その場合は子どもにぴったりとは言い難くなります。
このように気になる要素は、可能な限り細かく調べる方が良いです。
冷静で客観的な判断が必要な中学受験ですが、志望校選びについては、学校の体制が我が子にどう影響するか、我が子がどう活用できそうか、と言った視点も必要です。
また、文科省は指定校の、より質の高いカリキュラムの開発や体制整備を支援しています。つまり文科省が指定するスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)、スーパーグローバルハイスクール、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)などの指定を受けているというのも、評価ポイントです。
偏差値
志望校選びといえば偏差値を思い浮かべる方も多いかと思いますが、使い方には注意しましょう。偏差値は集団の中での位置を示すものですので、一緒にテストを受ける人によって大きく左右されてしまうのです。
例えばAくんBくんCくんが100点満点のテストを受けて、Aくんは50点をとったとします。
100点満点のちょうど半分の点数ですが、Bくんが90点、Cくんが80点をとっていた場合、Aくんの偏差値は低くなります。
しかしBくんが20点、Cくんが30点をとっていた場合、50点のAくんはかなり優秀な成績と評価されます。
このように、同じ点数を取っていたとしても、母集団のレベルによって評価が一変してしまうのが、偏差値なのです。つまり自分のレベルにあった模試や学校を選ばないと、正当な評価がなされず、道標となるはずの数字が、逆に過信や心配の種となってしまいます。客観的な自己評価が必要です。
また四谷大塚のテストでも、80%偏差値、50%偏差値と出していますが、例えば「80%偏差値」とは、「その偏差値の受験生が100人いたら、80人は合格していた」ということで、「その受験生が10回受けたら8回合格する」ということではないという点にも注意が必要です。
なお、偏差値は人気度や難度を表しますが、その学校の良し悪しを表すとは限らないと言う点にも気をつけましょう。偏差値的には低くとも、成果をあげている学校は決して少なくありません。
人気の学校にはそれだけの理由があるかもしれませんが、志望校選びを偏差値だけに頼ると、お得な学校を見逃してしまうこともありますので、注意しましょう。
偏差値以外のポイント
説明会や文化祭などでの雰囲気を見ることが重要です。特に最近では、校長先生の指導力、先見性、目標としているものに注目する人が多いようです。
ここでいう雰囲気とは、教室や建物の状況、生徒の服装、態度などです。先生や事務員も含めて、その学校の校風が自分の子どもに合うかを見定めましょう。
またOBやOGの社会的活躍度も、この学校ではどんな子が育つのかという参考になります。
親のサポート
中学受験はしばしば「親子の受験」と言われます。子ども自身の努力はもちろん必須ですが、まだ幼い12歳の子どもは自身の精神状態やスケジュールをうまくコントロールできません。
そのため親の支えが、結果と如実に結びつきます。どう接するべきか、何がしてあげられるかと考えながら、受験という長距離を、二人三脚で走りましょう。
詳しくは「親がすべき4つのサポート」もご参照ください。
勉強状況や対目標の管理
まず、親が果たすべき役割として、状況をチェックし、間接的に受験勉強をバックアップする「監督」になるのか、直接勉強の指導をする「コーチ」になるのかを考えなくてはなりません。
ただし、「大人でも難しい内容を、わかりやすい解説で、きちんと理解させながら」教えるコーチ役はかなりハード。例えば算数だと多くの親が、5年生後半の段階でギブアップします。
現実的には、ある程度の段階で指導をプロ(塾講師)に委任し、監督業一本に絞って、進捗管理や精神的ケアなどに徹するのが良いでしょう。
親が子どもに勉強を直接教える場合に、陥りやすいのが「教え過ぎ」です。
問題の解説をしているうちに、子どもが理解していると思い込んで、親の独演会になってしまうことがままあります。
最後に「分かった?」と聞くと、子どもも「分かった!」とほほ笑みますが、次のテストでは同じところをまた間違えてしまいます。これを繰り返すと、親子ともども感情的になってしまい、いわゆる「親子バトル(親子喧嘩)」が勃発します。
こうした状況にならないためには、本当に分かっているか説明の合間に質問したり、答えを教えずに子どもに考えさせたりするなどが必要です。
慣れないと難しいので、教える方もコツを習得するには、それなりの時間が必要かもしれません。
心身の健康状態の管理
塾のお弁当や送り迎えなど、親が子にしてあげられることはたくさんありますが、心身の健康状況の管理には特に気をつけるべきです。
どんなに前向きに頑張っていても、長時間の勉強は子どもにとっては大きなストレスであることは間違いありません。こまめに様子をチェックし、声をかけてあげましょう。
特に、受験シーズンはインフルエンザや風邪の流行シーズンでもあります。何年にも及ぶ頑張りが水の泡にならないように、受験直前は特に体調に気を配り、予防接種や、手洗いうがいの徹底による対策を講じましょう。
また、一番大切なのは親自身の心身のコントロールです。お母さんやお父さんがパニックになれば、子どもにも伝染してしまいます。ゆったりと構えて、子どもの背中を押してあげましょう。
入学試験の内容とその対策
試験形式
中学受験の試験形式はさまざまなパターンがあります。
大きくは下記の4つのパターンに分けられますが、一部例外もあります。
4教科型
一番スタンダードなパターンです。多くは、国語、算数、理科、社会が受験科目です。
昔からの伝統校などは、この4教科型のみで行うところも多いですが、4教科の要素が絡み合う、総合型・適性検査型入試も近年増えてきています。
いずれにしろ、オールマイティさが求められます。自信のある科目だけでなく、苦手な教科も含めて、総合的な勉強が必要です。
- 御三家をはじめとする超上位校、上位校は4教科受験が多い
開成中学校、渋谷教育学園渋谷中学校、武蔵中学校、聖光学院中学校、栄光学園中学校、桜蔭中学校、女子学院中学校、フェリス女学院中学校、早稲田実業学校中等部など
※2019年10月現在
2教科型
国語と算数の2教科で行う学校が多いですが、国算理社から受験科目を指定・選択する学校もあります。
4教科と比べて勉強範囲が少ないので一見楽そうに思えますが、その科目が得意な子どもが集まることが多いので、逆に厳しい試験になる可能性があります。
- 2教科受験は中堅校までに多いが、上位校にもある
洗足学園中学校、香蘭女学校中等科、山手学院中学校、跡見学園中学校、十文字中学校、桜美林中学校など
※2019年10月現在
帰国子女向け試験
帰国子女や外国人生徒のみを対象とした入試です。面接や英作文などで、英語力を図られる形式が多いです。
難易度は学校によってさまざまで、英検準1級相当の非常に高いレベルを求められる学校もあります。
また、4科の試験内容は一般生対象の試験と同じですが、合否ボーダーラインを20点前後下げて合格を出すなど変則的なパターンもあります。
公立一貫校の「受検」
適性検査(約70~80%)+報告書(約20~30%)で評価がなされます。適性検査は、複数の教科の組み合わせ問題で、読む力、書く力が問われます。
私国立と違い小学校の学習範囲から出題されますが、難易度は高いです。
基本的に適性検査Ⅰ、適性検査Ⅱ、適性検査Ⅲに分かれます。Ⅰは国語系、作文の問題で、Ⅱは算数・理科・社会の複合問題です。Ⅲは各校ごとの独自問題ですが、多くは理数系、特に算数の問題を出題しています。
Ⅰ、Ⅱは一貫校の共同作成ですが、一部独自問題にできます。Ⅲは各校の独自問題です。
この他にも、英・算・国の3教科型で入試を行う学校や1教科受験を実施する学校、算+理で入試を行う学校、学科試験の他に面接等がある学校などがあります。
また、科目としては、従来の国算理社だけではなく一般入試での英語入試も増えています。
特に志望校に試験形式が複数ある場合は、お子さんの適性と照らして選びましょう。
各教科の出題範囲や問題内容・傾向、その対策
国語
漢字の書き取り・読み取り、文法問題、文学史、読解問題(文種:説明的文章、物語文、随筆、詩)などが出題されます。設問形式は、記述、選択肢、抜き出し、整序問題などです。
読解力や論点整理力などに代表される国語力は、他教科の問題へのスピーディな対応にも生かせる、いわば受験全ての礎といえます。低学年から読書習慣をつけておけば、非常に大きな武器となるでしょう。
ただし国語の試験の説明的文章は新書からの出題が多く、物語文も児童文学以外の小説から出題されることが少なくありません。
幼い頃から文章を読むのが得意という子どもも慢心せず、大人向けの文章に慣れておくことが大切です。
漢字の書き取りや慣用句、ことわざなど語彙を増やすことも必要でしょう。
中学入試には決まったテーマが出やすいので、まずは志望校の傾向分析と対策から行うのも良いかと思います。論理的に考えることが重要です。
算数
算数を制する者が受験を制すると言っても過言ではないほど、中学受験の中心となる教科です。
計算、割合と比、速さ、図形、表とグラフ、数の性質、規則性、場合の数などが出題されます。
学校により難易度、出題数などさまざまですが、多くのお子さんは問題をこなせるようになるまで、4教科の中で一番時間がかかります。基本的には、演習量が成績に比例すると考えても問題ありません。
ただし、単純に公式を暗記したり、簡単な問題の演習を繰り返すだけですと、応用問題(例えば「数の性質」「規則性」「場合の数」などの難しい問題)に当たると苦しむことになります。「なぜこうなるのか」という考え方を持って、問題に当たりましょう。
理科
動植物・人体、地学・気象・天体、化学、電気・力学・光・熱・音など、出題分野は広範囲にわたります。
これらに関する知識を問う問題や計算問題のほか、その応用としてグラフや表の読み取り、記述や作図の問題も出題されます。
また実験に関する問題ももちろん出ますが、塾ではテキスト上では扱うものの、教室の物理的スペースの問題で、本格的な実験を伴う授業はなかなか難しい場合が多いかと思います。(「理科実験教室」を開講している塾もあります。)
稀に「小学校での授業は直接受験とは関係ない」と、気を抜いてしまう子どもがいますが、実験を始め、小学校でしかできない学びがあることをしっかり意識しておきましょう。
社会
地理、歴史、公民の他に時事問題も出題されます。ニュースをチェックする習慣もつけていきたいものです。
これらに関する知識を問われることはもちろんですが、問題中に示された図や表を読み取って答える問題も頻出しています。また、近年記述問題も大幅に増えていることなどから、やはり読解力や論理的思考は不可欠と言えます。
なお、社会科用語は指定がある場合は漢字で書かなくてはいけないので、読むだけでなくしっかり書いて覚えましょう。
社会も理科同様に学校での勉強――特に教科書が重要で、教科書に掲載されている絵などから出題されることも少なくありません。塾の勉強だけでなく、学校や家庭で、いかにアンテナを張っておくかがポイントとなるでしょう。
英語
以前は多くが帰国子女向けでしたが、近年は一般生徒に対しても実施されることが増えてきました。
日常会話程度の簡単な面接から、英検2級、英検準1級レベルを要求される問題まで、学校によってかなり難度の幅が広いです。
筆記が主となりますが、リスニングやエッセイを書かせる学校もあり、一部では大学入試と見紛うレベルのものもあります。
受ける学校の特性(海外大学への進学に力を入れているかなど)や過去の試験の実施状況を、しっかりチェックしましょう。
面接
個人面接やグループ面接のほか、1次試験合格後の2次試験として、保護者同席で実施する学校もあります。
事前に練習して、スムーズに受け答えできるようにしておくことが大切です。
緊張しないためには
模試に積極的に参加する、「お試し受験」を経験するなど、試験の雰囲気に慣れておくことが効果的です。
また古典的ですが「人人人」と手のひらに書いて飲み込むなどのおまじないをルーティン化し、自分は大丈夫と暗示をかけ、気分を落ち着かせる手段とするのもいいかもしれません。
合格発表
大きくは、学校掲示板での掲示とホームページでの発表の2種があり、いずれも決められた時間に一斉に開示されます。併用しているところも多いです。
午前中に試験を行い、その日の午後に合否を発表するなど、対応が非常にスピーディーな学校もありますが、2日後に発表という学校もあり、学校によってまちまちです。
受験スケジュールを作る際は、他の試験との兼ね合いを図れるように、合格発表のタイミングも考えましょう。
合格後手続き
合格していたら、その学校に入学するのか、お金の手続き等をどうするかなどを判断し、手続きをすると決めた場合は、学校の指示に従って速やかに行いましょう。
また他の試験との兼ね合いを考え、少し様子を見る場合は、いつまで入学金の振り込みを待てるか?という点に注意が必要です。
たとえ落ちてしまった場合も、合格発表後数日して、辞退者が出たための繰り上がりの補欠合格の知らせが飛び込んでくることもあり得ます。念のため、連絡先に記載した電話の着信状況には、一定期間気を配りましょう。
落ちてしまった場合
悪天候や体調不良、そして予想以上のプレッシャーなど、終わるまでは何が起こるかわからないのが受験です。どんなに入念に準備をしてきても、残念ながら第一志望に落ちてしまう子どもも、全ての出願校に落ちてしまう子どももいます。
遊びたい盛りの年頃に一生懸命勉強してきたわずか11、12歳の彼ら、彼女らにとっては、自分自身を否定されたような気持ちになってしまうかもしれません。
そんな時に支えとなるのが、親です。単純になぐさめるだけ、もしくは叱咤するだけではなく、なぜ落ちてしまったのか、その原因を突き止め、二度と繰り返さないようにすることが重要です。
その際、子どもを突き放したり、マイナスの感情をぶつけるのは絶対にやめましょう。大切なのは落ちてしまった子どもを、両親は決して見捨てない、変わらずに愛しているとしっかり伝えることです。
その経験が、高校受験や大学受験でリベンジしようなど、将来を前向きに頑張って行こうという気持ちを養います。
まとめ
以上が、中学受験全体の概要です。感覚は掴めたでしょうか?中学受験は親子ともに大きな努力と苦労が必要ですが、やり遂げた後には、それを補って余りあるものが手に入ると思います。
今後もさまざまな角度から解説を行っていきますので、ご意見やご感想、こんな疑問が知りたいというお声を、ぜひお聞かせいただければと思います。
この記事の監修者
小泉浩明 (こいずみ・ひろあき)
1956年東京生まれ。平山入試研究所所長・森上教育研究所研究員。桐朋高校・慶応大学卒業後、米国にてMBA取得。現在は「小泉国語塾」の運営、執筆、教務研究を行う。著作に「必ず出てくる国語のテーマ」(ダイヤモンド社)他。
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